あの台風12号と可航半円|MINのウラナミVol.321

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MIN/社畜暦23年/サーフ事業局所属/小笠原父島出身(実は湘南茅ヶ崎うまれ)/波乗り歴は30年以上/サーフィンと海以外の趣味は、仮想通貨、ガジェット、アクアリウムで、社内ではいわゆるオタ寄りな存在(?)
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こんにちは、MINです。今年の台風シーズンは、これまでの台風の発生数や接近・上陸数もさることながら、この時期にしては珍しいコースや異例のコースを辿るケースがあるなど、驚かされてばかりです。

中でも台風12号は、小田和正さんの名曲『ラブ・ストーリーは突然に』のシングルCDのジャケ写と同じコースだとネットで話題になりましたが、まさに今年の台風シーズンを象徴するような台風で印象的でしたね!

 

台風12号にヤキモキ

 
さて、前回のウラナミでは、複数の気象モデルを見ることの必要性について書かせていただきました。

書いた当時、私は休暇で小笠原諸島父島へ帰省する直前で、父島から本土へ帰るころに台風が接近する可能性があったものの、気象モデルによってその予想進路が大きく異なっていたため、帰省に影響がでないか非常にヤキモキしていたのを覚えています。

その台風とは、まさに台風12号のことです。

 

予想が難しかった台風12号

 
台風12号は、結果的には7月27日に父島にほぼ上陸と言えるほど最接近となり、28日は父島の北東海上から本州へ向けて北上、29日に本州へ上陸・通過というコースを辿ったわけですが、私が父島に滞在していた当時、気象庁から進路予想が発表される度にその内容が変わっていたため、本土へ帰るための船便である小笠原海運が運行する「おがさわら丸」が予定通り運行されるか心配していました。

船は、予定では7月27日に東京を出港し、28日に父島に到着予定。また同日中に東京へ向けて父島を出港し、29日に東京へ着くスケジュールでしたので、海上は大しけになることが予想され、島民の多くが船は父島に来ない、つまり欠航を予想していました。

過去に、台風の接近で大しけの中を航行した際、過度の揺れでけが人が出たこともあり、安全を考えると欠航が良さそうに思えます。しかし、欠航になると観光業は大打撃ですし、島民にとっては食料物資を届ける唯一のライフラインであるため非常に困ります。また、上京していた島民が島に帰ることもできなくなりますし、島に訪れていた観光客もまた帰れなくなりますので、欠航の判断は難しいようです。
 

2018年7月27日正午の波高の実況解析

2018年7月27日正午の波高と風の実況解析


 

2018年7月28日正午の波高の実況解析

2018年7月28日正午の波高と風の実況解析


 

可航半円とは

 
そんな中、「おがさわら丸は竹芝桟橋を条件付きで出港する」という旨の島内放送が流れました。条件付きとは、もしも想定以上に海上が荒れていた場合、東京へ引き返すということです。

皆は「ほんとに来るのかよ?」「正気か?」「どうせ引き返すでしょ」などと口々に言っていましたが、私は「やっぱり来るよね。来られるよね」と思っていました。

可航半円という言葉はご存知でしょうか。

ざっくりいいますと、台風の進路方向に対して左側半分のことです。その反対側は危険半円といいます。可航半円は進行方向に対して真逆の風になるため、風速は台風の進行速度の分だけマイナスに作用し、危険半円と比較すると風速がやや弱くなります。そのため、航海が可能な場合があり、そのような呼び方になったようです。

おがさわら丸の航路は、北上してくる台風に対して可航半円側でした。実際に、複数の気象モデルを見比べましたが、いずれも可航半円側の風が弱く、波高も低い予想だったため、私は航路を西寄りにとれば来れるだろうと考えていました。おそらく海運側もそのような考えだったのでしょう。

 

小笠原海運の英断

 
とはいえ、発達した台風に向かって東京を出向し、北上する台風と並走するように東京へ向けて航行するということは、船長・船員としては非常に怖いことでしょうし、万が一の時にはいろいろな問題が発生することは容易に想像できます。気象情報を見ての判断だったとはいえ、英断だったと言わざるを得ません。

のちにわかったことですが、27日に東京から父島へ来る船に乗船していた知人は、「思ってたより揺れなかったよ」と言っていました。また、28日に父島から東京へ向かう船には私自身が乗船していましたが、多少は揺れたものの大したことはなく、安心して帰路につくことができました。

小笠原海運さん、素晴らしい判断をありがとうございました。

 
 
 
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