cold wave ~季節風が生み出す冬の波~|米山予報士のウラナミ

米山予報士

米山予報士
米山予報士/大学を8年で卒業。その間、勉強などせず、山と海で遊ぶか家に引きこもっていました。当然、就職などまともにできるはずがなく、社会人経験もゼロ。なのに30歳になってしまいました。ただ、山のおかげで天気図に興味をもち、サーフィンをやっていたから気象予報士になれたと思います。サーフィンと気象、波情報の業務を精一杯頑張りたいです。

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通常、寒波とは大陸からの冷たい空気が南下し、気温が著しく低下することを言いますが、サーファーにとっての寒波とは?と、問われれば、冬に立つ波のことに他なりません。「元気があれば何でもできる。寒波が来ればサーフィンできる」はこれからの時期の合い言葉ではないでしょうか。(宮崎など一部の方は違いますね。すみません)

そもそも寒波とはどこから来るのか?

これからの時期は西高東低の気圧配置という言葉をよく耳にすると思います。冬になると、北極に近いシベリアなどから中国大陸まで空気が異常に冷えて重たくなります。この冷たくて重たい空気が大陸の内陸部に強い高気圧を作りだし、大陸から冬の季節風となって寒気を吐き出してきます。日本に来る寒気はシベリアからの高気圧の吹き出しで、一部は日本の北東で猛烈に発達した低気圧に吸い込まれ、一部は日本海から太平洋側へ流れ込み、一部は東シナ海を南下して、沖縄から東南アジアへ向かいます。(サーファーのための気象ガイドブックより)

このために、日本近海では強い北西~西寄りの風が吹き荒れ、荒波となる日本海・東シナ海では風が弱まるタイミングや風をかわす場所が狙い目となり、和歌山(磯ノ浦)では貴重な風波となり、東海~千葉などではオフショアの時や波が回り込んで入ってくる場所ではサーフィン日和となります。

大西の風がもたらす波

遠州灘(東端の御前崎から西端の伊良湖岬までの長いコーストライン)で吹く強い西寄りの風のことを大西の風と呼びます。冬型の気圧配置になると、全国的に北西寄りの季節風が強く吹きますが、遠州灘では強い西寄りの風になります。これは北西寄りの風が日本海から琵琶湖、伊勢湾へ通じるラインで集約され、地形や自転の影響で右へ曲げられる性質を持つため、西寄りへシフトするからです。(波伝説 Wave Forecastより)

この大西の風が吹くことにより伊良湖~千葉では波が立ちます。普段波のある東海や千葉では目当てにされている方は少ないと思われますが、南伊豆や湘南では冬季にサーフィンができるありがたい風です。

強い冬型の気圧配置になった12月4日の夕方の波情報をみると、ロングビーチ→強い西北西の風・腰腹たまに胸、舞阪灯台前→強い西北西の風・肩~頭、御前崎メイン→極強い西の風・頭~頭半、片浜→強い西の風・腰~腹前後、多々戸→強い西の風・オーバーヘッド~頭半、鵠沼→強い西南西の風・オーバーヘッド~頭半、平砂浦→強い西の風・頭前後と大西による波が反応していることが分かります。 

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また、これは石廊崎、潮岬、宮崎の波高の季節変化を示すデータですが、赤線の石廊崎では12月から3月にかけての寒候期に波が著しく高くなっていることが分かります。また、先ほど触れましたが、逆に青線の宮崎では11月から波高が下がり、1月に一年で最も波が小さいことが分かります。(波浪学のABCより)

この西寄りの波は上がる時と上がらない時があり、今の所、御前崎、石廊崎、大島辺りのアメダスで風向・風速を目安にすることが多いです。
また、湘南ではオフショアが強まっても必ずしも波が抑えられるという訳ではありません。そもそも、大西の風となるのはシベリアの高気圧から吹き出す季節風であり、この風が沖合では西寄りの風、沿岸では北~北東寄りの風となって、相模湾付近でぶつかる時があるからです。つまり、海と陸の摩擦を考えると、陸>海なので、出所の同じ風が沿岸で強まれば、海ではさらに強まっている可能性があり、波が高くなっているかもしれないということです。

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これは相模湾の平塚沖約1kmにある海洋観測塔で観測した風と海岸で観測した風の関係を示した図です。東南東~西南西の南寄りの風が1~1.5の範囲。それ以外の風向は1.5~2の範囲に収まっていますが、値が1に近いほど沖合と沿岸の風速が近いことを意味していますので、北寄りの風が吹いている時は沿岸のほうが風が弱いことが分かります。つまり、陸地の摩擦の影響で風が弱まっていることを示しています。(気象庁技術報告第91号と波浪学のABCより)

今回は色々本などをみて、書いてみたのですが、こういう知識からのアプローチは大事かなと思いました。でも、波は深過ぎて逆に分かんなくなっちゃったりして・・。(笑)

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