
2026年7月、台風9号は湘南に今シーズン屈指のスウェルをもたらしました。
湘南から遠く離れた海域を進んだにもかかわらず、波は胸〜肩サイズからダブル前後まで成長しました。
なぜ、これほど長く、そして大きな波になったのでしょうか。
今回の台風9号を、勢力・進路・うねりの変化という3つの視点から振り返ります。
最上位クラス「猛烈な台風」へ発達
台風9号はマリアナ諸島付近で発生し、その後急速に発達。気象庁の勢力区分で最上位となる「猛烈な台風」まで成長しました。
「猛烈な」は、最大風速54m/s以上の台風に使われる区分です。
湘南へ接近した台風ではありませんでしたが、猛烈な勢力を維持したまま暖かい海域を長く進んだことで、海面には膨大なエネルギーが蓄えられました。
波が大きく成長するためには、3つの条件があります。
① 風が強いこと
② 長い距離にわたって風が吹き続けること(吹送距離)
③ 長い時間風が吹き続けること(吹送時間)
今回の台風9号は、この3つの条件をすべて満たしていました。猛烈な勢力による非常に強い風が、暖かい海域を長い距離・長い時間吹き続けたことで、長周期でパワフルなスウェルが形成され、遠く離れた湘南まで台風スウェルは届きました。
「台風は近いほど波が大きい」と思われがちですが、今回の台風9号はその典型例ではありません。台風との距離だけではなく、「風の強さ」「吹送距離」「吹送時間」という条件が揃うことで、遠く離れた台風でも湘南に頭半からダブル前後までサイズアップするスウェルをもたらすことがあります。

6日(月)〜9日(木):台風スウェルが徐々に反応
台風9号は6日に最盛期となり、7日に南東〜南寄りのうねりが徐々に反応し始め、胸〜肩サイズまでアップ。その後も反応が上向き、頭オーバー〜頭半までサイズアップし、本格的な台風スウェルとなりました。
10日(金)〜12日(日):南西うねりも加わり、サイズはピークへ
南西うねりも反応し始め、サイズは頭半前後までアップ。次第にダブルサイズにまで達する瞬間もあり、オンショアも影響しやすく、多くのポイントでクローズアウトになるタイミングがありました。
13日(月)〜15日(水):ピークアウト
台風9号が中国大陸へ上陸した後も長周期のスウェルは残り続け、サイズは徐々に落ち着き、幅広いレベルで楽しめるコンディションになりました。そして15日にかけて終息へ向かいました。
風向きの変化もコンディションを左右した
今回の台風9号では、うねりだけでなく風向きの変化もコンディションを大きく左右しました。
オフショアが中心だった7日ごろまでは、北から張り出す高気圧から南の梅雨前線へ向かって吹く北寄りの風が主流となり、多くのポイントで面が整いやすい状況でした。
ところが、8日以降は北の高気圧が次第に南下するとともに梅雨前線が消滅。高気圧の吹き出しによる南寄りの風が主流となり、日中はオンショアの影響を受ける時間帯が増えました。
朝は放射冷却の影響で沿岸では一時的に風が弱まることもありましたが、沖合や日中は南寄りの風が吹きやすく、サイズアップしたスウェルと重なったことで、波質を落とした日時も多くなってしまいました。
このように、台風だけでなく、高気圧や低気圧・前線の位置にも注目することで、風やコンディションの変化をより正確に読み取れるようになります。
「できるポイント」はあっても、決してイージーではなかった
今回の台風9号では、由比ヶ浜、水族館前、茅ヶ崎パーク、大磯など、強いうねりや南西風をかわしやすいポイントを中心に、上級者やエキスパートであれば、サーフィンできる時間帯がありました。
しかし、周期の長いセットが入ると状況は一変します。
「できるポイントがある」と「誰でも楽しめる」は別の話です。
今回のような長周期スウェルでは、セット間隔がかなり長いため海が穏やかに見える時間もありますが、その後に入るセットでコンディションが大きく変わります。
そのため、波のサイズだけでなく、周期やセットの入り方を見極めることの重要性を改めて感じさせるスウェルとなりました。
おわりに
今回の台風9号では、毎日少しずつ海の表情が変わっていきました。
サイズが上がる日、クローズする日、遊べる場所が変わる日、そしてゆっくりと落ち着いていく日。
同じ台風スウェルでも、勢力や進路、風や潮回りによってコンディションは大きく変わります。
だからこそ、毎日の波情報には、その日の海を読み解くヒントがあります。
今回の台風9号は、その面白さを改めて感じさせてくれるスウェルでした。
過去の記事はこちら↓
「The Dayの条件に迫る─2026年台風6号は湘南のゴールデンコースだったのか?」
湘南 台風7号・8号を振り返る ― グランドスウェルへの”あと一歩”を読み解く ―


















