Banzai Pipeline, Oahu. Hawaii 2016.
五十嵐カノアの父ツトムが、試合に帯同して父親目線で観たリアルで愛のあるツアーレポート。
今回は名勝負となった2016年パイプラインマスターズ・セミファイナルでの五十嵐カノア対キング・ケリースレーターのストーリーを回想する。
Text & Photo by TOM IGARASHI & WAX SUZUKI
Movie by WSL
2016年ですね。早いな、時がたつのは。
カノアは18才CTルーキーイヤー。あれから毎年ダブルクオリファイを続ける。パイプラインでケリー様と一騎打ちってサーフィン史上…って事ですよ。凄すぎて観ていられなかった。カノア自身はあそこまでやれるって自信はあった。幼い頃からこのためにハワイに通ったし、波のない日も、荒狂う波の日も、パイプに通った。ケリーさんの「パイプドリーム」の内容が頭の中をぐるぐると回る。あのケリーさんとパイプでのマンオンマンだ。見れないよ。
結果なんてどうでも良い。観たく無い。でもドンドン時間が近づいていく。ケリーさんとのパイプ勝負なんて現実離れしすぎてる。
幼い頃からカノアとケリーさんといったら、全くもって子供のカノアをケリーさんは真剣に接していてくれていた。ゴルフの時、食事の時も、もちろんサーフィンの時も。カノアはしっかりとケリーさんの行動やそぶり、話を聞き育った。
はっきり言って師匠というより神様だった。サーフィンの神様っす。なんで神様とパイプでルーキーのカノアが。やっぱり見たくない。
そうこうしている間にヒートスタート。
ビーチにはサーフィンファン、いやハワイアンのカノアのファンで埋め尽くされていた。前日にハワイアンのズイーク(エズィキール・ラウ)をカノアがダブルクオリファイを決めた事で繰り上げでCTに参戦決定をさせたから。ありがとうカノア!頑張れよ!って地元ハワイアンの声援が響いた。
俺もハレイワの街を歩いていると「ありがとうイガラシ!」ってたくさん声をかけられました。すごく嬉しかったっす。カノアは本物(CTサーファー)になって来たのかなって、少し実感が沸いた瞬間だった。
サーファーにとってCTってのがメジャーリーグ。野球もメジャーリーグじゃなきゃって時代でしょ。しかしメジャーで成績を残すことって並大抵じゃないと思う。ましてサーフィンって自然相手で良い波をつかめたとしても、その波で100%のサーフィンを披露しないと結果に繋がらない。
2016年のルーキーイヤーを振り返るとカノアは1コケがひとつもない。これまた凄い記録なんだよね。じゃあカノアはCTで通用するんだな、とか徐々に実感が湧いたのもこの最終戦でファイナルまで進み、ルーキーにしてパイプラインマスターズ準優勝をした瞬間でした。
では、カノアと五十嵐ファミリーにとって歴史的瞬間となった王様ケリー・スレーターとのセミファイナルのムービーをどうぞ!
Kelly Slater vs. Kanoa Igarashi – Billabong Pipe Masters 2016 Semifinals @WSL
でも当時はまだ喜べなかった。CTってのはそんな甘いところじゃない。一瞬一瞬つねに初心を思い出し、喜ぶなんて事はできない。当時はまだミックさんやタジさんなんかも現役だったでしょ。彼らは本物だからね。
このYouTubeの再生回数は、「1,590,624回」。日本からもカノアの日本人初のCTサーファーを取材するテレビクルーや新聞に雑誌が大勢来てました。
<エピソード2>へ続く。