こんにちは、ようやく台風シーズンが終わったなと、安堵しているMINです。台風15号、19号が関東へ上陸した際は、今私が住んでいる湘南でも相当に強い風が吹き、子供のころ父島に住んでいたときに避難所で怖い思いをしながら過ごしたことを思い出させられました。
近年の台風は、過去に例のないような進路をたどったり、異常とも言えるほどに発達した状態で日本に接近・上陸するなど、もはや過去の経験が通用しなくなってきていることは皆さんも感じておられるかと思います。
気象庁の台風進路予報も度々大きく変更されますので、台風が日本から、あるいは自分の住む地域から逸れる予想だったとしても、最後の最後まで安心できなくなってきました。
そのため私たちは、今後、台風の進路予測についての理解をさらに深め、より多くの情報をもとに事前にリスクを知っておく必要が出てきているかと思います。
各国の台風の進路予測の精度検証結果
さて、そんな台風の進路予測についてですが、実は気象庁は今年5月14日、『台風進路予報における数値予報の課題』と題した、台風を予測するにあたって気象庁が認識している課題や今後の取り組み方針などが書かれた資料を公開しています。
資料:http://pfi.kishou.go.jp/Presen2019/6_yonehara.pdf
内容はかなり専門的なことが書かれており難しいですので、興味がある方だけじっくり読んでいただければと思いますが、私たちに最も関係しそうな情報として、P.13に書かれている各国の台風進路予測の精度の検証結果を一覧にしたグラフが興味深いので、以下に紹介したいと思います。
下の折れ線グラフは資料から抜粋したもので、各国が発表する台風の進路予測について気象庁が独自に追跡と検証を実施し、実際に台風がたどった経路との誤差の量(距離km)を年ごとに数値化し、その推移を視覚化したものです。
縦軸は、予測された地点と実際の地点との誤差の距離を示しており、値が大きいほど誤差が大きく、その予測モデルには予測の難易度が高かったことになります。横軸は年ごとの推移を表しています。
最新のデータは2016年とやや古いのですが、20年前、10年前と比較しますと、ここ数年は各国ともに随分と誤差が縮まってきているように見えます。
そこで気になるのが、「そもそもどの予測モデルが当たっているのか」だと思います。
グラフの赤い線は、日本の気象庁です。その他、主だった国の予測モデルは下記の色で表されています。
■JMA:日本の気象庁
■ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター
■NCEP:アメリカ海洋大気庁の国立環境予測センター
■UKMO:イギリス気象庁
■NRL:アメリカ海軍研究所
■KMA:大韓民国気象庁
グラフを見ますと、進路予測の難易度には年々変動が見られることがわかりますが、その中でも日本の気象庁は1996年以降、世界でトップクラスの精度を維持しています。
しかしながら、過去10年ほどにしぼって見ますと、「最近はやや水をあけられている」と気象庁が自らコメントしているように(資料より引用)、もっとも誤差が少なかったのはECMWFというヨーロッパの予測モデルで、その他にもイギリスのUKMOやアメリカのNCEPの予測モデルの方が誤差が少なかった年が多くなっていたことがわかります。
余談になりますが、NCEPの予測モデルはGFSというもので、波伝説でも提供している週間予報の気圧配置図はそのデータを用いています。その情報をもとに独自のノウハウと技術で追算しているものがWRFという風予測です。さらに、SWANはその風の予測データを用いて当社独自に波浪予測を行っているものになります。
話を戻して、今年は、台風の予想進路について特に関心が高まったこともあり、気象予報士の森さんはテレビ番組の中で複数の予測モデルの予想進路を説明するなど、今までにない試みをされていたようですが、台風の予想進路は気象庁の進路予報だけでなく、その他の国が提供する予報も見ていくべきです。
もちろん、気象庁の進路予報には予報円というものがあり、何パターンもの計算による予測結果をもとにして予想される誤差の範囲を示しているわけではありますが、どうしても予報円の中心だけに目がいってしまいがちですし、そもそも予測モデルの違いによる予想のズレはそこには現れてきません。
そのため、気象庁の進路予報だけでなく、他国の気象モデルによる進路予報も見ることが望ましいです。
まとめ
ここまで記してきたように、台風の予想進路を知るには、気象庁の予報だけを見ていてはだめな時代になってきました。中でも、高い予測精度を維持してきているECMWFやNECPのGFSは、ぜひ見ておくべき情報と思います。
複数の進路予報を見るということは、それだけ進路の可能性を知ることになり、それは事前にリスクを把握することにつながります。複数の予報が同じ傾向であれば、実際にそのようになる可能性が高いと考えられますし、まったく異なる予想がされている場合は、少なからずそのことを意識しておかなければなりません。
NECPのGFSは、波伝説でも見られますし、ECMWFはSNSなどでもよくみかける「Windy」などで見ることができますので、来年の台風シーズンに向けてこれらのデータに慣れておくことをおすすめいたします。