☆加藤のウラナミ『Yours!! Yours!!!』

☆加藤

☆加藤
会社代表であり、波乗りと海が大好きなサーファーです。子どもたちに安全安心な海を残すことと、島国などへ高精細な気象情報を提供することを残る人生のライフワークにしました。サーフトリップネタが多くなりますがお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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皆さん、こんにちは。
さて今年は、まだ台風が一つも発生していませんね。昨年の湘南などでは、Big Sizeはほとんどなかったものの、まずまずの遊べる波が数多く続いて、一般的なサーファーにとっては嬉しい波の当たり年となりました。
しかし、今年は台風スウェルどころか、台風の発生すら一つもありません。(涙)

台風1号が発生する平均月は3月上旬ですが、1998年の台風1号の発生は7月9日とかなり遅い年でした。気象庁の発表では、2014年夏から長く続いたペルー沖の西風が弱まり気候変動を引き起こすエルニーニョ現象は急速に勢力を弱めていて、この夏は逆にペルー沖の西風が強まるラニーニャ現象になる可能性があるそうです。ラニーニャになると、フィリピン周辺の積乱雲の活動が活発になって台風が発生しやすくなります。
今年は台風の発生が遅かった1998年の時に似ているのでは、との見方がありますが、同年は結果的に台風の発生数は16個と多くはなかったものの、夏からは台風の発生が増えて、7月1個、8月3個、9月5個、10月2個、11月3個、12月2個発生して、日本列島へ接近・上陸してサーファーに待望の台風スウェルをもたらせたと思われる台風は、あくまでも私の推測ですが11個になりました。
かなり強引な結論ではありますが、今年の台風1号の発生は遅いですが、夏以降の台風スウェルは短期集中ながら期待できる可能性がありそうです。

前置きが長くなりましたが、先のGWに、昨年『Discovery IndonesiaⅡ』シリーズ中でBEST WAVEを当てた某ポイントを含む西ティモールのロテ&サブ島周辺に、プライベートでしたが再びボートトリップしてきました。
詳しいトリップの様子は、後日コラムでアップしますが、ロテ島のメインポイントの“T-Reef”で経験した、私にとって素敵な体験をご紹介したいと思います。

オージーに加えてヨーロピアンにも人気の高い素敵な『T-Reef Resort』

オージーに加えてヨーロピアンにも人気の高い素敵な『T-Reef Resort』

トリップ前半、太陽がかなり傾き、殺人光線がかなり和らいだころになると、波の面を乱していたサーマルウィンドも徐々に吹き止み、また潮が満ちてマジックのように2~3サイズ大きなセットが入るようになることを我々は数日間のサーフィンで経験していました。
しかも、サーフリゾートにステイするサーファーは、迎えのディンギーを予約しているため、徐々に帰って数が減ってきます。我々は、板を振ればSAMA SAMA号のディンギーが速やかに迎えに来てくれるので、暗くなる寸前まで目いっぱいサーフィンすることができます。
その日も、サーファーの数が徐々に減り、大きなセットがたま~に2~3本入るパターンで、私は小さなセットには目もくれず、じっとアウトで一人大きなセットだけを待っていました。
そこへようやく水平線が盛り上がり、狙っているセットが入ってきそうな兆しが感じられました。まもなく予感は実感となりましたが、ベストポジションを見極めるために、焦って沖にパドルアウトすることはせずに、逸(はや)る気持ちをぐっと抑えてその場にウェイティングすることにしました。
振り返って背後のサーファーのポジションを確認すると、一人のヨーロピアンらしいBBが私よりもピークにいるではありませんか!!! いつの間に俺よりも奥にいたのか...!?
一瞬お互いの目が合うと、そのヨーロピアンのBBはこう叫んだのです。

『Yours!! Yours!!!』

ちょっと躊躇していた私でしたが、その“神対応の感謝のお言葉”に、『Thank you!!! Thank you~!!!!!』と、満面の笑顔で応えて、ベストポジションに少しパドルしたら軽く差し乗りし、完璧に続くショルダーを望むことができる深いボトムターンを決めることができました。
結果的に、そのセットの波は「Small G-Land」と言われるT-Reefの“Good Wave”そのもので、まずまず掘れるものの、速くもなく遅くもなく、リッパブルな極上のレフトブレイクが、これでもか、これでもかと延々と続き、恐らく5発くらい気持ち良くバックサイドリッピングをメイクし、もうこれ以上乗ると危険な浅瀬まで、200m以上つなぐことができたのでした。

忘れられない1本のレフトブレイク

忘れられない1本のレフトブレイク

もしもそのヨーロピアンのBBが、そのセットを取るべくテイクオフの体制に入っていたら、恐らく自分は仕方なく次のセットを狙っていたとは思いますが、きちんと波をキャッチできたかどうかは分かりませんし、あのBBの神対応の言葉により、リラックスしてライディングができたことは言うまでもありません。それまでは軽い挨拶しかしなかったそのBBとの距離が、心の中で一気に縮まった素敵な体験でした。

Good Leftbreak.

Good Leftbreak.

波を分かち合うサーファー&BBにとって、国境、言語、民族、宗教、性別、年齢の差はありません。あるのは、海と波と波乗りを愛するピュアな気持ちと、たまたまそこにいた者同士の絆だけです。こんな嬉しい気持ちになれることがあるからこそ、サーフィン&サーフトリップはいつまでも止められませんが、ユーザーの皆さまも共感できることではないでしょうか。(もちろん、意地悪なサーファーがたまにいることもありますが・・・)
太陽が沈んで日が暮れかけたのもありますが、会心のライディングを終えた私は、すっきりとした気持ちでパドルバックすることを諦めて、あとの波をピークに残っているサーファーや感謝すべきヨーロピアンのBBに譲ることにして迎えのディンギーに向かいました。
残念ながら、その日以降は別のポイントがGood Waveになったために、そのヨーロピアンのBBにはお礼を言わず仕舞いになりましたが、またいつかどこかの海で、もしも出逢うことができれば、必ずあの瞬間のお礼を申し上げたいと思います。
『Yours!! Yours!!!』
今のところ、私の“2016年流行語大賞”です。(了)

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