米山予報士のコラム2回目『南海上から北上する台風』

米山予報士

米山予報士
米山予報士/大学を8年で卒業。その間、勉強などせず、山と海で遊ぶか家に引きこもっていました。当然、就職などまともにできるはずがなく、社会人経験もゼロ。なのに30歳になってしまいました。ただ、山のおかげで天気図に興味をもち、サーフィンをやっていたから気象予報士になれたと思います。サーフィンと気象、波情報の業務を精一杯頑張りたいです。

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皆さん、こんにちは。
2022年台風1号はビッグスウェルをもたらしてくれましたね。4月に台風スウェルを味わえるとは、2022年は幸先の良いスタートになりました。春からサーフィンを再開される方も多いと思いますので、サーフィンシーズンの始まりとも重なりますね。IMG_4734

3月中旬〜5月中旬に台風1号が発生すると平年並と言って良い(デジタル台風調べ)そうなので、4月に台風が発生することは珍しくはないのですが、4月の台風はほとんどがフィリピン方面に進みます。ごくたまに沖縄に近づくことがあるくらいなので、この時期に湘南で台風スウェルが入るのはなかなかありません。
SnapCrab_NoName_2022-4-19_23-13-35_No-00(4月に発生する台風の経路 デジタル台風より)

今回は台風1号と同じく、南海上から北上する台風の傾向について調べてみました。
なお、サイズと点数は比較的うねりに敏感でコンスタントに割れやすい鵠沼の情報です。

2022年台風1号

2022 台風1号

4月14日

台風スウェルが入り始めたのは、北緯20度付近。15〜30km/hで北北東に進み、中心気圧950hPa、大型で非常に強い勢力のときに腰〜腹前後まで反応しました。▼20が3回、▼30が5回でしたので、良くはないものの、多少できるようになっていました。米山 プレゼン (12)

4月15日

20〜45km/hと速度を少し上げ、徐々に勢力を弱めながら小笠原諸島を通過しました。オーバーヘッドまでサイズが上がり、▼30が4回、△40が4回でした。潮回りによっては遊べていて、セットが間隔がかなり長かったので、サイズのわりに海に入っている方も多めでした。米山 プレゼン (13)

4月16日

午前3時に南東海上で温帯低気圧に変わりました。朝はダブル近くまでサイズが上がり、×10が2回、▼20が4回、▼30が2回でした。前日の夜に南岸低気圧が南海上を通過したような状態になり、ハード・クローズ近くまでなりましたが、オーバーヘッドまで徐々に落ち着きセット間隔がありましたので、何とかできるようになっていました。米山 プレゼン (14)

特徴

うねりが入り始めてサイズが上がるのが早い
・腹前後→オーバーヘッド→ダブル近くと、日に日にサイズが上がってました。初日は自転車並のスピードで、だんだん速度を上げながら北上したのと、北緯20度の時点で非常に強い台風に発達していたのが要因だと思われます。

セット間隔がかなり長い
・ごくたまに巨大なお掃除セットが入り、波にパワーはありましたが、海に入っている方は多く、朝にクローズ近くなった16日も昼前後には人が入っていました。僕が昼過ぎに入った時も、イメージとしては胸・肩くらいで、30分に1本のクローズセットを耐えればいいような感じだったので、サイズのわりにゲットが楽でした。15日までは南岸付近に停滞前線があり、北〜北東風が10m/s〜15m/sくらいで吹き、沿岸でもやや強いくらいの風だったので、セット間隔を長くしてくれたのだと思われます。



2021年台風16号

米山 プレゼン (24)(過去の記録)

9月27日

台風スウェルが入り始めたのは、北緯20度付近。ゆっくりとした速度で北上し、920hPa〜950hPaで猛烈〜非常に強い台風とかなり発達していたときに、夕方に腰〜腹前後になりました。2021 t16 1

9月28日

非常に強い台風のまま北緯21〜22度付近をゆっくり〜10km/hで北上し、朝には肩くらいまでサイズアップ。▼30が1回、△40が8回となり、遊べていました。

9月29日

非常に強い勢力を保ち、北緯23〜25度付近を10〜15km/hと自転車並の速度で北北東進しました。頭くらいにサイズアップし、▼30が4回、△40が5回と、まずまず遊べていました。

9月30日

非常に強い勢力を保ち、北緯26〜27度付近(小笠原諸島と大東諸島の間くらい)を15〜30km/hとやや速度を上げながら北東進しました。オーバーヘッドまでサイズアップし、▼30が2回、△50が3回、◇60が3回と、この台風のなかでは一番遊べる日になりました。2021 t16 2

10月1日

大型で非常に強い勢力を保ったまま八丈島に接近し、30〜40km/hで関東の南東海上を北東進しました。極強い北北東風と頭半〜ダブルオーバーになり、終日×のクローズアウトになりました。2021 t16 3

10月2日

午前3時に日本の東海上で温帯低気圧に変わりました。
肩くらいが続き、▼30が2回、△40が7回と遊べるくらいに落ち着きました。

特徴

遊べる日が多い
・うねりが入り始めた翌日から、△40が8回→△40が5回→△50〜◇60が6回→終日×0→△40が7回と、クローズした日を除くと温帯低気圧に変わるまで毎日遊べていました。これはゆっくりとした速度で北上し、非常に強い勢力をキープしたのが要因だと思われます。

最接近した日は極強い北寄りの風でも終日クローズ
・前日の9月30日も沖合の数値予報は波高7mくらいで強かったのですが、まだ北緯26〜27度付近と少し距離があったので、一番遊べる日になりました。最接近した10月1日は頭半〜ダブルオーバーのクローズが一日続きました。これは、大型で非常に強い勢力のまま、関東の南東海上までかなり接近し、前線などブロックする要素もなかったのが要因だと思われます。



2つの台風の共通点

北緯20度付近でうねりが入り始めている

・北緯20度は台風のうねりが入る目安なので、この付近で反応したのは、セオリー通りでした。台風1号は非常に強い勢力、台風16号は猛烈〜非常に強い勢力だったので、発達した台風であれば北緯20度をうねりが入る目安としても良さそうです。

波の最もいい日は北緯25度を越えた小笠原諸島くらい

・台風1号は北緯24〜29度くらいまで北上した日にオーバーヘッドになり、△40が4回で最も点数のいい日でした。台風16号は北緯26〜27度くらいまで北上した日にオーバーヘッドになり、△50が3回、◇60が3回で最も点数のいい日でした。緯度では小笠原諸島付近に進んだ日にベストな波がきていたので、南海上から北上してくる台風の進路予想で小笠原諸島となっていたら、注目してみたいところです。
なお、台風16号のほうが遊べる日が多かったので、南海上をゆっくりした速度で北上してくる台風のほうが期待はできそうです。

最接近した日はダブル以上

・台風1号は台風16号と比べると日本から少し離れていましたが、温帯低気圧となり南東海上に進んだ日の朝はダブル近くになっていました。台風16号は最大ダブルオーバーで終日クローズアウトになっていました。湘南でオフショアのままダブル以上になるのは珍しいので、あまり発達しない台風のときは当てはまらないと思いますが、南海上で非常に強い〜猛烈な勢力に発達した台風が接近したときは、かなりサイズが上がる場合がありそうです。



予想よりもサイズの上がらなかった2021年台風20号

ただし、2021年台風20号も進路が似ていましたが、南東海上に最接近した日は腰〜胸前後となり、予想よりもトーンダウンした結果になりました。米山 プレゼン (29)(過去の記録)

思ったよりもサイズが上がらなかった原因を探るため、北東風の強さの違いを調べてみました。2021年台風20号が最接近した日のアメダスの最大風速(10分間平均)を調べると、八丈島は午前10時に北東風14.3m/s、大島は午前6時に北北東風10.8m/sが最大の値となりました。一方、今回の台風1号が最接近した日は、八丈島は午前2時に北東風10.4m/s、大島は午前2時に8.1m/sが最大の値でした。台風20号のときのほうが八丈島の風は3.9m/s、大島の風は2.7m/sほど強く、うねりが抑えられていたと思われます。しかし、ダブルオーバーまでサイズが上がった2021年台風16号が最接近した日を調べると、八丈島は午前9時に北東風18.6m/s、大島は午後4時に14.6m/sが吹いており、最もサイズが上がったにもかかわらず、うねりを抑える方向の風も最も強く吹いていました。
米山 プレゼン (31)

一概に北東風が強く吹いているからサイズが抑えられるとはいえず、北東風の強さとうねりの強さの関係を証明するのは、時間がかかりそうです。しかし、サーファーにとっては重要ですよね。少しでも予想の精度をアップできるように、検証を続けていきたいと思います。

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