CATCH THE WAVE.
ブンブンパドリング
今回のサーフガイドの「Wayan」は、これまで私が経験してきたサーフガイドの中でも断トツNo.1として評価したいほど優秀なガイドだと言い切れます。
バリ島でガイドのみならずサーフィンコーチもしているために日本語が少し話せて、英語は流暢に話せます。
またとても優しく接してくれるので、ゲストの皆ともすぐに仲良しになりました。毎日のサーフポイントを選択するサーフガイドとしての力量も優秀ながら、毎日のセッション中に我々ゲストに1本でも多く会心のライディングをして喜んでもらおうとその一生懸命さが伝わって感激するほどでした。
サイズのあるコンディションが続いたので、ゲストによっては板を押してテイクオフをサポートすることも厭わないし、波を見る目、その能力は素晴らしいものがありました。
波を見るということでは私も日本では波情報を生業としているのですが、外洋のインド洋に接するスンバ島の波はそんな日本での経験も役に立たないほどで情けない思いで一杯になりました。
その情けなさを振り払うほど、Wayanの波を見る、波を読む力は素晴らしく適切でした。
「カトさん、もっと右、もう少し右~、そこからブンブンパドリングしてぇ~……」
湘南のように大陸棚に囲まれ、相模湾という浅い湾の中に届いてくる波の速さは遅くなります。波が進むスピードは、水深が深い外洋ほど速くなり、湘南など湾内では浅くなるほど遅くなります。
スンバの場合、波のスピードが速いうえにリーフの上で割れ始めるポジションは狭く、事前にいかに速く前後左右に自分のポジショニングをそのピンポイントに移さねばなりません。さらにWayanから何度も強くコーチングされたのは“ブンブンパドリング!?”です。
波がそそり立つ前のポジションに速く動いたら、全力で“ブンブン”と水中になるべく深く手を入れて速く漕ぐことを強く熱心にアドバイスされました。
「カトさん、もっと速く速くパドリングして~……」
どうしても内海の湘南の遅い波のスピードが身体に染みついているせいか、ブンブンパドリングをし始めるタイミングが遅くなってしまい、波のスピードに追いつけずにテイクオフできなかったり、レイトになってパーリングしてしまうことが何度もありました。
パドルで波のポジショニングに合わせて移動し、ここぞという場所から早めのタイミングでブンブンパドリングすることができるようになったのは、残念ながら後半になってからでした。(涙)
また、テイクオフする際にはショルダー側の手を手前に、反対のピーク側の手を少しだけ前にズラして上体を反らしてからテイクオフすることと、テイクオフ時に顔をショルダー側に向けることでその後の板の進行が波のハイラインに向かっていき、速くブレイクする波でも走り抜けることができて、その後のワッパー(バリ語でリッピング)につなげられることを教わりました。
最初にボトムに降りてボトムターンしてしまうと、速い波につかまってしまうことが多く、スムーズなテイクオフからハイラインを走るこのポジショニングが取れるとその後のライディングにも余裕ができて良いライディングとなりロングライドも可能になりました。
Vol.7につづく(12月1日公開)