一番右のメラメラとした今にも割れそうなリップを乗り越えるスカイラー・リックル(奥の青のゼッケン) Si Crowther
レディースの若手、高校を卒業したばかりのスカイラー・リックルは、歩いてピアヒまで行けるほど近くで生まれ育った18歳。
父親のブレットは、レアード率いるオリジナルトゥインメンバー7人のうちの一人で、トゥインが始まる前からウインドサーフィンでジョーズを攻めていたビッグウェイブサーファー。
大会で勝つということより、みんなで楽しく乗るタイプ。いつもにこやかで女の子らしいけど、運動能力だけは男子顔負けで、度胸は確実に男性以上のものを持っていた。
12歳の時にアウターリーフでどうしてもチューブに入りたくて、何度も何度も掘れる波に突っ込んでいた。
カイトサーフィンはプロ級で、フォイルサーフィンはレディースでは最も早くからやっていた一人。
アウターリーフでのトウインサーフィンは、父親に連れられて小さい頃からやっていたが、ジョーズでのパドルサーフィンは今年から。
でも持ち前の度胸で最初からチャージを見せ、巻かれても動じずに今シーズンは大会前にブレイクした小さめのジョーズで必ず彼女の姿がラインナップにあった。
そんなところをかわれて、今大会への出場権を手にしたのだった。
ヒート中は風がどんどん強くなり、何度もテイクオフを試みるが結局一本も乗れずに終わってしまったのは本人にとっては残念だったかもしれないが、初出場なのに誰よりも奥に陣取る勇気も素晴らしいし、大の男でも泣きが入るようなセットをギリギリのところでやり過ごしたり、あるいは突き落とされて巻かれたりと、とても10代の可愛らしい女の子とは思えないチャージぶりだった。
今回の悔しさは、来年の成長ぶりをさらに飛躍さ)せる起爆剤になるはずだ。
もう一人のワイルドカードで大会前日に出場が決まったのが、17歳 のアニー・ライカート。彼女は女性版カイ・レニーと言われる存在で、17歳という若さですでにSUPの世界ではプロアスリーツとして世界を回っている。
現在は、サップレースでワールドランキング4位、最も過酷な海峡レースであるモロカイ2オアフを紅一点のフォイル選手として2年連続で完走した。
サーフィンを真剣にやりだしたのは数年前だが、持ち前の限界を作らない性格でどんどん上達し、去年初めてペイジに連れられてジョーズを体験。
今年は前述のスカイラー、そしてもう一人の若手レディースのイジー・ゴメスの仲良し3人組でプッシュし合いながらジョーズに挑戦している。
毎年優勝候補だったアンドレア・モーラーが、今年のWSLは出場しないと決め、アニーに資格を譲った。
アンドレアも、彼女たち若手のことを心から応援し、実際大会中も自分が出ていないのにも関わらず、海上のジェットで待機し、多くのアドバイスをあげたり、膨らんだインパクトベストを着替えさせたり、ワイプアウトで痛む場所をチェックしたり(彼女の職業は救急救命士なので)全面的にサポートしていた。
1ヒート目を無難に勝ち上がったものの、決勝では風が強くなかなかテイクオフすることができず、立ち上がった状態のまま風で裏に行ってしまうことが続いたが、最後の最後に意を決したのか、セットの波にテイクオフ……
エアードロップに近い状態でフェイスに降りてからも、荒れたフェイスにボードが暴れ、今にもワイプアウトしそうだったが、しっかり前を見据えた完璧なフォームをキープし、ショルダーまでしっかりと波をメイクした。
彼女が乗り終わって、チャンネルに向かってパドルアウトしていくのを見ていたペイジが、嬉しそうに迎え入れ、げんこつををかわして祝福していた。
「冬はまだまだこれから、次の波が待ちきれない!」とジョーズの特別な魔力に完全に取り憑かれたアニー。
これから、さらにレディースのレベルを引っ張り上げるサーファーになっていくことだろう。
先輩のサポート、そしてそのサポートと期待に応えようと全力でチャージする若者たち。
ビッグウエイブの歴史が受け継がれ、この特別な情熱も引き継がれている様子が、そんなところにもはっきりと感じられた。
この3人だけではない。崖の上で見ていたティーンエイジャーたちはたくさんいて、彼らに続けという思いで応援していた。
きっと数年したら、今度はタイやスカイラーやアニーがさらに若いサーファーを連れてジョーズへと導いていくのだろう。(了)