ナッカルビのウラナミ『あの巨大波、5分前なら読めるらしい』

ナッカルビ

ナッカルビ
湘南生まれ、湘南育ち。 夏になると家族と海水浴に行き、ボディボードで少し遊ぶくらい。そんな自分が縁あってサーフレジェンドに入社し、先輩に連れられて初めてSUPに挑戦……したものの、見事に挫折ww 今は仕事と家族優先の毎日ですが、いつかまた海で何かに挑戦できたらいいな…… 家では娘2人の父として奮闘中。よろしくお願いします!

巨大波予測技術_アイキャッチ


こんにちは、ナッカルビです。

3年半ほど前に、このウラナミで『出会いたくない巨大波』という記事を書きました。

大型船をも沈めてしまう、なんの前触れもなく現れる化け物みたいな波の話です。

あのとき私は「いずれ発生原理が分かれば、予測できるようになるかもしれません」と書いてましたが……実はその”いずれ”が、もう訪れているようです。


巨大波は「未知の怪物」ではなかった

ジョージア工科大学のフランチェスコ・フェデーレ准教授らの研究チームが、北海で2003年から2020年にかけて記録された約27,500区間(1区間は30分)の海面観測データを解析しました。

そこで分かったのは、巨大波の発生に特殊な未知のメカニズムは要らないということ。

別々の速さ・方向を持つ波が同じ場所でタイミングよく揃って強め合い、そこに海の波特有の効果が加わって、波のてっぺんがさらに15〜20%ほど高く尖る。よく知られた現象が、きれいに噛み合っただけだったんです。

フェデーレ准教授はこれを「巨大波とは、要するに海にとっての”機嫌が悪い日”だ」と表現しています。

怪物ではなく、確率の端っこ。そう言われると、怖さの質がちょっと変わる気がします。

巨大波予測技術_画像1

巨大波が残していく「指紋」

さらに面白いのが、巨大波には「指紋」があると分かったこと。

大波のピークの前後には、複数の波列が重なって強め合うときに現れる特徴的な波のかたまりが残るのだそうです。

つまり巨大波は、何もないところから突然湧いて出るわけではないんですよね。

どんな波がどう重なって組み上がったのかが、その前後の海面にちゃんと残っている。だから「指紋」と呼ばれているわけです。実際、2023年11月に北海のプラットフォームで観測された約17mの波も、この理論とAIモデルを使って形成過程が解析されました。

参考:Rogue waves aren’t freaks of nature — they’re just a ‘bad day’ at sea(Georgia Institute of Technology / EurekAlert!)


で、何分前に分かるの?

ここからは別の研究チームの話です。

メリーランド大学の研究では、アメリカ沿岸などにある172基の波浪ブイの膨大な観測データをニューラルネットワークに学習させ、巨大波が来る前兆を読ませました。

結果は、1分前で約75%、5分前でも約73%の巨大波を検出。ただし空振り(誤警報)もそれなりにあり、まだ実用の警報システムには届きません。

それでも、たった数分と侮れません。甲板から人を退避させたり、危険な作業を止めたり、船の姿勢を整える準備をしたり。海の上では、その数分が生死を分けることがあります。

ただし今の技術で想定されているのは、あくまで「観測ブイのそばにいる船や海洋プラットフォームに警報を出す」ところまで。外洋をひた走る船が自力で先を読むには、まだ宿題が残っています。

参考:Prediction of freak waves from buoy measurements(Scientific Reports, 2024)

巨大波予測技術_画像2

まとめ

サーファーが海面を眺めて「そろそろセット来そう」と体で読むのと同じことを、最新の科学でやっている。

そう思うと、なんだか親近感が湧いてきませんか。

1995年に高さ約26mの波が計測されるまで、巨大波は「船乗りの伝説」扱いでした。

それが30年経った今では、生まれ方が解き明かされ、予測する方法まで確立されようとしている……素晴らしい科学の進歩です。

2026年8月10日現在、この「指紋」を本物の警報につなげるには、ブイやレーダー、カメラといった海面観測とAIを組み合わせてリアルタイムに解析する技術の発展が必要とされています。

この未来の警報システムが生み出す数分は、いつか確実に誰かの命を守る数分になるはずです。

では、次回もよろしくお願いします。

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