米山予報士『東日本大震災から10年 被災地のサーフポイントを訪ねました』

米山予報士

米山予報士
米山予報士/大学を8年で卒業。その間、勉強などせず、山と海で遊ぶか家に引きこもっていました。当然、就職などまともにできるはずがなく、社会人経験もゼロ。なのに30歳になってしまいました。ただ、山のおかげで天気図に興味をもち、サーフィンをやっていたから気象予報士になれたと思います。サーフィンと気象、波情報の業務を精一杯頑張りたいです。

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皆さん、こんにちは。2011年3月11日の東日本大震災から10年が経ちました。僕は当時大学を卒業する年で家にいたのですが、長くゆっくりと大きく揺れる地震を感じ、すぐさまテレビをつけると被災地の映像や情報が流れ、刻々と悲惨な状況に変わっていったのを覚えています。

あれから10年が経ち、弊社社長の加藤に誘われ、4月19日と20日にかけて宮城・福島のサーフポイントやサーフショップを訪ねてきました。

小豆浜・菖蒲田浜 『MATTYS’Surf』

朝の5時過ぎに湘南を出発し、最初に向かったのは宮城県の菖蒲田浜です。
茅ヶ崎から圏央道〜東北道を使い、5時間ほどで到着しました。高速代金は1万円超でお高いのですが、2017年に茅ヶ崎まで開通した圏央道が利用できるようになり、都心の渋滞につかまることがなくなったので、東北に行くのがだいぶ早くなりました。

昼前に菖蒲田浜の隣の小豆浜に着くと、目の前で『MATTYS’Surf』というサーフショップを経営し、いつも菖蒲田浜の情報をいただいている星さんに連絡し、お店に立ち寄らせていただきました。
星さんは魚の仲卸もされていて、すぐ目の前の海で穫れる白魚というシラスより少し大きな魚を全国の都市に出荷したり、販売したりしていて、地元の方もよく買いにくるそうです。
小豆浜、菖蒲田浜ともに駐車場は綺麗に整い、サーファーも戻り、被災後の復興はだいぶ進んでいるようでした。
小豆浜で1ラウンドほどサーフィンをさせてもらいましたが、この時期もブーツ・グローブは必須で、湘南の真冬かそれ以下の水温に感じました。ただ、気温が20度くらいありましたし、ドルフィンをしてもキャップは必要なかったので、思っていたよりは冷たく感じませんでした。
波質はダンパーが多いそうですが、最近は地形が決まり、潮の上げ込みで良くなるそうです。
これから暖かくなる時期のサーフトリップとして訪れたいポイントの一つになりました。
なお、特に小豆浜は広いポイントではないので、大人数で海に入ることは避けていただければと思います。
image11菖蒲田浜
image10 (1)整備された広い駐車場

仙台新港 『JAPSS SURF』

次に向かったのは、仙台市の街中にあり、仙台新港の情報をいただいている熊谷さんが経営されているサーフショップ『JAPSS SURF』です。
ご夫婦でショップを切り盛りされ、奥様の素子さんは元プロサーファーで、ご子息の航(わたる)さんは仙台新港の動画ではよく見かけるトップアマチュアサーファーです。

仙台新港は、日本のビーチブレイクで一番ともいわれる三角波が立つことで有名です。
向洋海浜公園内の駐車場の前にポイントがあり、広い駐車場は綺麗に整備され、サーファーや休憩中の方を多数見かけました。こちらもサーファーは戻っているようです。
また、仙台のコロナ感染者は一時より落ち着いてきているようなので、これからさらに落ち着くことを願っています。
ただし、まだ県外の方は少なく、緊急事態宣言、蔓延防止などが解除されたあとでも、サーフトリップで訪れる際はその辺りの情報を聞いてみてから判断するほうが良さそうです。
image9仙台新港
image8向洋海浜公園駐車場

荒浜 『REAL SURF』

仙台の次に向かったのは、亘理郡亘理町でサーフショップ『REAL SURF』を経営されている残間さんのお店です。
荒浜ポイントのすぐ近くにショップがあり、いつも情報をいただいています。こちらは常磐道が亘理町まで開通したので、千葉・茨城・福島方面からのサーフポイントへのアクセスも良くなり、仙台市からも30分強で訪れることができます。
周囲は田畑が広大に広がり、外灯は少なく、住居や街に近い菖蒲田浜や仙台新港とは景観がだいぶ違いましたが、駐車場は整備され、海の前に温泉もありました。また、残念ながら訪れた時は閉まっていたのですが、近くに『あら浜』という有名な海鮮料理屋さんもあります。

震災後は、水中に消波ブロックが散乱して危険な状態でしたが、水中ブルドーザーで多くを除去し、サーファーも戻ってきているとのことでした。ただし、新たに消波ブロックを震災前よりも岸寄りに設置したため、プールはサイズが上がるとすぐに消波ブロックの沖から波が割れ、クローズしやすくなってしまったようです。
そして、春先に気温が上がると、山からの雪解け水が河口に流れてくるため、水温は低めとのことでした。
どちらのポイントも広くはないので、多数で海に入ることは避けなければいけませんが、ローカルの方は朝・夕にサーフィンをされ、日中は比較的空いているとのことでした。
ビジターの方は日中に入るのが良さそうです。
なお、荒浜の海の前にある温泉宿、わたり温泉鳥の海でも宿泊はできますが、3階以外に宿泊用の部屋はなく、コロナ禍で併設のレストランは閉まっていましたので、利用する場合は事前に営業状況を確認した方が良さそうでした。
image6荒浜河口
image7すぐ近くの駐車場

右田浜・烏崎・北泉 『SUN MARINE』

亘理町にある「ファミリーロッジ仙台・亘理店」で一泊したのち、福島へ向かいました。福島は、広大な土地にソーラーパネルを設置している景観が印象的でした。
宮城から近い右田浜に着くと、巨大な風車が何基かあり、触れるほどすぐ近くに行けるので初体験でした。
地形は深いみたいで、ブレイクはしてもトップのみのダラダラでサーファーはいませんでした。
次に烏崎に行くと、堤防の脇で海に入っているサーファーを4人見かけました。
サイズはなく、人も少なく、この時はロングやビギナーの方などがサーフィンするには良さそうでした。

そして、次に向かったのは北泉です。こちらはサイズが右田浜や烏崎よりもあって、ブレイクするポジションも広く、左右、真ん中とサーファーも散らばって7〜8人が入っていました。
駐車場は綺麗に整備され、すぐ近くに高台があり、被災後の復興が一番進んでいて、利用しやすい印象でした。
ここで1ラウンドさせていただきましたが、時間帯によって良い場所が変わるみたいで、僕達が入る前は左が切れていたのですが、入ると風も影響してしまい厚いブレイクで、サーフィン後に見ると、真ん中辺りが良くなり、人もそこに集中していました。

その後、南相馬市で『SUN MARINE』というサーフショップを経営されている鈴木さんにお会いしに行きました。
震災前は、北泉などの波情報を鈴木さんからいただいていました。
帰宅困難地域の立入禁止エリアを除けば、海岸沿いの復興工事が進み、サーファーもだいぶ戻ってきているそうです。
波情報の復活について鈴木さんと相談しましたが、今では地元のサーファーらは原町が北泉ポイントに設置しているライブカメラを見ているので、それで良いのではとのことでした。いずれ波伝説の北泉ポイントのところからライブカメラが見られるようリンクを貼りたいと思います。

宮城県菖蒲田浜から福島県北泉ポイントまで、湘南を出発して2日間で一気に復興状況を視察した感想は、10年間が経過したとはいえ、津波に流された海沿いの街並みは、堤防と土地の嵩上げ+区間整理は終えているものの、新たに建設される住宅や会社や工場は遅れていて更地が多く、震災前の賑わいを少しでも戻すためには、今後も何らかの建設費用や人件費の大きな助成が必要と感じました。

菖蒲田浜ポイントの星さん、荒浜ポイントの残間さん、烏崎ポイントの鈴木さんらのショップに加えて、今回は行けなかった小泉ポイントの鈴木さんらのサーフショップは津波に全てを流されましたが、皆さん逞しく再建されています。

海でアウトに出るには、何発もドルフィンしながらパドリングを続けねば出られません。また、東北の冬の水温はとても低く、結果的に逞しいサーファーを育てているのだと思います。
皆さん再建されたサーフショップをさらに手を加えながら頑張っている姿が、同じサーファーとしてとても勇気をいただきました。
いずれコロナ感染が収束したら、今度はゆっくりと東北エリアをサーフトリップしてみたいと思います。

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