地元の小学校などで講演することも多く、恵まれない子どもたちや障がいのある子どもたちが海で遊べるようなイベントを開催したりもしている
大怪我をしてから、彼女は自分の心に正直に行動しようと決めたのだった。
つまりレースに勝ちたいとか出るべきだというようなエゴや義務感、周りからの期待のために自分が動くのではなく、心から自分がやりたいことにフォーカスをすることにしたのだった。
それまでは、スポンサーにプッシュされるからこの大会は出たほうがいいなど、自分の本音とはちょっと違う部分での活動もあったかもしれないが、そういうのを自分の生き方の中から削除することにしたのだった。
『いくらレースで優勝して凄い凄いと言われても、翌日の仕事では、事故現場で人の死を目の当たりにするような現実がやってくる。人が生きるか死ぬかの状況にいたら、レースで勝ったか負けたかなんて本当に大したことじゃないと良く分かるの。つまり常に自分に奢(おご)らず謙虚にさせてくれる環境に投げ戻されるっていうわけ。プロスポーツの世界にいると、栄光の幻影の中に生きてしまいそうになることもあるから。
でも私の場合、仕事に戻れば無力で人の命も助けられるかどうかも分からない。一人の人間がジタバタしている状態に戻れるから、優勝の栄誉に酔いしれる暇もないの。(笑)
大変なことだけれども、それが自分にとってはすごくいいことだと思っているの。そして反対のことも言えるわ。パラメディックの仕事中に心が傷つくようなハードなシチュエーションがあったとしても、それを引きずることがないのは、仕事の後に海に入れば傷ついた心が浄化されるからだと思うの』
ここまで彼女を引きつけてきたビッグウエイブや海峡横断の魅力はなんなのだろうか?
『大きな海に惹かれる理由の一つは、アドレナリンよ。アドベンチャーは大好き。波乗りだけでなく、海を渡ってハワイ島に行こうとかも、私にとってはアドベンチャー。
ビッグウエイブもその一つで、私にとっては冒険なの。だから私は小さな波でリッピングするサーファーではないわ。そういうサーフィンをしたこともないし、いわゆる上手いサーファーではないの。(笑) そういう波の時にはまっすぐ突っ込んじゃうような波乗りしかできない、でも大きな波、パワーのある中で落ち着いて行動することができるの。それはアドベンチャー好きな性格やパラメディックとして訓練されてきた私の強みだと思う。とにかく大きなエネルギーを感じるのが好きなのね。海峡横断、ビッグウエイブなどはその典型と言えるわね』
彼女はパドルイムア(障がいのある子どもたちに海や外での体験をさせる団体)やオルカイレース、パラリンピックなどに関わり、コミュニティーにも貢献している。
『ハワイでカヌーをやるということは、カヌーチームのオハナ(家族)の一員になるということで、漕ぐこと以外のコミットメントも多いの。それでも、その中で私は何度も精神的にも環境的にも助けられてきた。トゥインサーフィンに最初に連れて行ってくれたマリアやカヌーチームで姉貴分としてずっと引っ張って応援してきてくれたジョセリンたちのように、私も次の世代にお返しがしたいの。それをするのが当たり前に感じられるのは、やはりカヌークラブのオハナのお陰だと思うわ。だって家族のためなら、できる限りのことをして助けたり協力したりするでしょう?カヌークラブは本当に自分の大きな家族なの』つづく。