2018年台風24号による藤沢市辻堂の波
このウラナミを書いているのは10月29日です。現時点では、台風22号が発生しており、予報円は大きくなっております。
このあと、台風の進路によって波がどうなるかを苦戦しながら考えています。
また、9月は、ほぼ毎週台風が発生し、日本に接近した台風が二つありました。詳しく調べてみると、9月は北西太平洋域で熱帯低気圧・台風が無い日は一日もありませんでした。
毎日公私ともに忙しい状態が続きました!
タイトルにある台風の進路予想について書く前に、まずは台風の予報円についてちょっと一言。
「台風の予報円が大きい」=「台風が大型」ではありません。
台風の予報円とは、「台風の中心が70%の確率でその中に入る」というのを示したものであり、「予報円が大きければ大きいほど台風の進路の予想に幅がある」ということになります。
大型・強い台風であっても、進路の予想がほぼ決まっていれば、予報円は小さくなります。
知らない方が多いので、まずはそのことについて理解してもらえればと思います。
さて、タイトルの台風進路予想についてです。
結論から言うと、「台風の進路予想は日本の気象庁がNo1」と気象庁の技術官の方がおっしゃっています。
現在、インターネットなどで世界各国の気象機関による台風をはじめとしたいろいろな気象情報を見ることができますが、台風予報に関しては日本の気象庁が一番優れているということになります。
それがなぜかを理解するためには、数値予報・アンサンブル予報というものを理解する必要があります。
数値予報とはスーパーコンピューターの計算を用いて行う天気予報のことです。
現在の天気予報はこのスーパーコンピューターの計算による予想に予報官が修正などを加えて発表しています。
スーパーコンピューターの性能が良ければ良いほど天気予報の精度も上がるということになります。
現在、世界で最高性能のスーパーコンピューターは、日本の理化学研究所が所持・運用している「富岳」ですが、気象庁が所持・運用しているスーパーコンピューターも非常に高性能となっています。
(数値予報の仕組み;気象庁HPより)
そして、アンサンブル予報についてです。
数値予報結果の誤差の原因はいくつかあり、初期値(計算開始時刻の気温・気圧・風速・湿度等)に含まれる誤差が拡大することがあります。
数値予報では、わずかに異なる2つの初期値から予報した2つの予報結果は、初めのうちは互いによく似ていますが、その差は時間の経過とともに拡大します。
観測データの誤差や解析手法の限界から、初期値に含まれる誤差をゼロにすることはできず、時間とともに誤差が拡大することを避けられません。
このような誤差の拡大を事前に把握するため、「アンサンブル(集団)予報」という数値予報の手法を利用しています。
この手法は、ある時刻に少しずつ異なる初期値を多数用意するなどして多数の予報を行い、平均やばらつきの程度といった統計的な情報を用いて気象現象の発生を確率的に捉えて予想をしています。
現在、気象庁が行っている台風進路予想は、このアンサンブル予報を用いており、27個の異なる初期値を用いてスーパーコンピューターで計算を行い、極端にズレが生じたものを省いて平均化をしたものを発表しています。
この手法により台風進路予想の精度が向上したことが認められています。
(台風進路のアンサンブル予報の例;気象庁HPより)
さらに、台風マルチアンサンブルという手法も用いられています。
先に述べた台風アンサンブル予報は、日本の気象庁だけではなく、アメリカやヨーロッパなどの気象機関でも同様のことを行っています。
この諸外国の台風アンサンブル予報を、日本の気象庁の台風アンサンブル予報に加えて、さらにアンサンブル予報するという作業を行っております。
これが台風マルチアンサンブル予報という、最新の台風進路予想となっております。
検証の結果、この台風マルチアンサンブル予報を行うようにしたところ、台風進路予想の精度が向上したとのことです。
さて、ということで最初の方に書いてあった台風の予報円の話に戻りますが、気象庁の台風予報の研究している方の目標は、台風の予報円をどんどん小さくしていくとのことだそうです。
より一層の精度向上を望みます!