唐澤予報士のウラナミ『台風がコントロールできる!』

唐澤予報士

唐澤予報士
唐澤予報士:1991年、沖縄でサーフィンを始める。(スノーボードも開始)  1993年、初めてフルマラソンを完走。1999年、気象予報士資格を取得し登録。現在に至り、一児(娘)の父です。

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2018年8月24日、台風20号による北海道・太平洋側某ポイント

大きな波が好きな方であれば、「○○年の台風○号の波は良かった!」という思い出が必ずあるかと思います。

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2020年9月6日、台風10号による湘南辻堂

台風は様々な気象被害をもたらすものの、水不足を解消するなどのプラスの部分もあります。そして、我々サーファーにとっては良い波をもたらしてくれます。台風シーズンには、お忍びで海外から有名サーファーが日本に来るほどで、台風の波は世界のサーファーにとって誇れるもの。

ただし、サイズ・風・うねりの向きなど、波が良くなるには多種の条件があります。台風の大きさ・強さ・進路などによっては数日間にわたり良い波が続くこともあれば、サイズが小さい、いきなりクローズ、オンショアでジャンクになるなど、まったく良くないこともありますよね。(8月の伊豆半島に上陸した台風8号における湘南は、サイズは上がったものの、クローズか風が入り続けて良くないままでした……。)

経験が豊富な方であれば、台風がどの位置で、どのくらいの勢力であれば、どこで波が良くなるかというのを大体予想できるかと思います。なので、台風の波を求めるサーファーなら、「台風の位置・コースや勢力などをコントロールしたい!」と誰しもが考えるのではないでしょうか。

実は、そのような研究・プロジェクトが進行しているのです!

現在、2050年までに台風を人工的に制御することを目標とする「タイフーンショット計画」というものが進められています。この計画は横浜国立大学の筆保教授、名古屋大学の坪木教授らが中心になって行われているもので、防災のみならず、台風のエネルギーを利用した「台風発電」の実現も目指しています。筆保教授は「今まで脅威だった台風が恵みに変わるという未来を目指していきたい」と述べられています。

過去には、1960年代にアメリカでハリケーン制御の計画があったのですが、成果が出ないまま頓挫してしまいました。(なお、この話は、筆者が小学生だった1980年代に学研から出されていた、まんがのひみつシリーズの「できる・できないのひみつ」でもチョロッと書かれていました。) しかし、スーパーコンピューターの発達や台風の観測・予測・構造解析などの技術が進歩し、今後もさらなる発展があれば、決して無理なことではなさそうです。





台風制御は内閣府が掲げる「我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する国の大型研究プログラム」である「ムーンショット型研究開発制度」に、今年の3月に採択もされました。

天気のコントロールは、高度な倫理観を伴うので、法整備なども含めて時間は掛かるかと思いますが、是非とも実現して欲しいと切に願います!(ただ、「2050年までに」ということを考えると、そのとき自分は○○歳。台風の波に乗れるのかではなく、サーフィンができればかなりの御の字で、おそらく……。2050年とはいわず、何とか2030年までに成功・運用して欲しい!)

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