
~Vol.2台風の独自予想はできない!?~
前回に続き、台風の基礎知識についてです。
まずは、台風の大きさと強さについて。台風のおおよその勢力を示す目安として、風速(10分間平均)をもとに台風の「大きさ」と「強さ」 を表現します。「大きさ」は強風域(風速15 m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、「強さ」は最大風速で区分しています。
〇強い 33 m/s以上~44 m/s未満
〇非常に強い 44 m/s以上~54 m/s未満
〇猛烈な 54 m/s以上
〇大型 500 km以上~800 km未満
〇超大型 800 km以上
なお、台風の「大きさ」と「強さ」との関係ですが、「大型」であっても「強い」台風になるわけではなく、「大型」「超大型」でなくても「猛烈な」台風となることもあります。台風の大きさと強さは相関するわけではありません。
また、昔は「小型の台風」「中型の台風」という言い方がありました。しかし、ニュースで「小型の台風」が来ると伝えていたにも関わらず、大きな被害を出した台風がありました。それは、「小型」という言い方により、その地域の人がちゃんと備えていなかったためと言われています。そのため、台風の注意を促すために伝える際には、「小型の台風」「中型の台風」という表現を廃止したのです。台風の大きさ・強さと、台風による被害の大きさも相関しないということになります。
続いて、台風、ハリケーン、タイフーン、サイクロンの違いについて。
結論からいうと、同じです。最大風速の基準に違いはありますが、熱帯低気圧が存在する地域によって、その呼ばれ方が違うだけで、気象的には同じ性質となります。それぞれの存在地域は以下通りです。
〇台風 東経180度(日付変更線)より西の北西太平洋および南シナ海
〇ハリケーン 北大西洋、カリブ海、メキシコ湾および西経180度(日付変更線)より東の北太平洋東部
〇サイクロン ベンガル湾、北インド洋
なお、過去には、太平洋東部で発生したハリケーンが西進し、日付変更線を越えた時点で台風に変わった、ということもあります。
続いて、台風の独自予想について。
日本で気象予報を行うには、免許が必要です。「気象業務法」という法律があり、気象庁以外の者が気象予報を行う場合は、気象庁長官の許可を受けなければならないと定められています。この許可を受けた予報業務許可事業者であっても、すべての予想行為を行えるわけではありません。警報を独自に発表することはできず、注意報・警報と紛らわしい名称・内容の予報や、台風の進路予想などの災害に関連する現象についての独自の予想の発表は制限されています。
これは、「防災気象情報の一元的な提供体制を確保するため、気象庁の防災気象情報と民間気象事業者等の気象情報との整合性に配慮」しなければならないため、民間気象事業社は「台風の進路等に関する情報は、気象庁の情報の解説の範囲に留めること」となっています。平たく言うと、台風の位置、進行方向・速さ、中心気圧、最大風速、暴風域等に関する現況及び予想は気象庁の『台風情報』に一元化しなければならないとなります。
では、株式会社サーフレジェンド・波伝説が行っている「台風」による波の予報はどうなのかというと、『台風情報』に沿岸域の波浪が含まれていないので、台風による波(波浪)の独自予想を行うことはできる、ということになります。
2025年台風23号による湘南・藤沢の波
ただし、予報業務のうち現象の予想については、気象予報士に行わせなければならない、ともなっており、日常的・継続的に台風による波(波浪)の予想を提供できるのは、「予報業務許可事業者」の「気象予報士」のみ、ということになります。ネットやSNSで、「予報業務許可事業者」の「気象予報士」ではないのに、台風による波の予想を日常的に継続している人は、厳密には法律違反ということになります。
なお、上記の理由により、数値予報モデルで熱帯域に低気圧が予想されていても、気象庁が台風情報を発表しないかぎり、「予報業務許可事業者」の「気象予報士」であっても「熱帯低気圧」「台風」が発生する、という予想を発表することはできません。概況・週間予想で「なお、海外の気象機関では、熱帯域で低気圧性の循環を予想している所もあります」のような書き方をしているのは、そのためとなります。
