ナッカルビのウラナミ『沈みゆく楽園のデジタル国家への挑戦』

ナッカルビ

ナッカルビ
湘南生まれ、湘南育ちながら海との接点が乏しい半生を歩む…。 今は自分の趣味より家族を優先しがちな中年です。 会社で教わったSUPを趣味にできたら、うれしいな。IT局所属。

Funafuti



こんにちは、ナッカルビです。
今日は、気候変動の脅威に直面する南太平洋の小さな島国、ツバルの革新的な取り組みについてお話しします。
海面上昇に対抗するため、デジタル技術を駆使して国家の存続を図る、その驚くべき挑戦を一緒に見ましょう。


沈みゆく楽園、ツバル

ツバルは、オーストラリアとハワイのほぼ中間に位置する美しい島国です。
しかし、気候変動による海面上昇により、国土の消失が現実味を帯びています。

ツバルの基本情報
  • 人口:約11,500人
  • 国土面積:26平方キロメートル(9つのサンゴ礁の島々からなる群島)
  • 平均海抜:約2メートル(最も高い場所でも約4.6メートルしかない)
フナフティ島の海岸

フナフティ島の海岸、Wikipediaより引用(CC BY-SA 2.0)

現在も海面は上昇を続けており、2050年までに海面が国土の大部分を覆い、重要なインフラが機能を失うと予測されています。


「フューチャー・ナウ・プロジェクト」の誕生

2021年11月の国連気候変動会議(COP26)で、サイモン・コフェ外相が海に膝まで浸かりながら演説を行い、世界中の注目を集めました。

この動画は何万回も再生され、ツバルの危機的状況を世界に知らしめました。
その後、ツバル政府は「フューチャー・ナウ・プロジェクト」を立ち上げました。

このプロジェクトでは、最悪のシナリオに備え、以下の点を目指しているそうです。

  • デジタル国家の創設:ツバルの統治、歴史、文化、価値観を反映したデジタル化された国家を構築し、物理的な領土が失われても国家機能を維持する。
  • 国家主権と海洋境界線の維持:仮に島々が海面上昇で水没したとしても、国家としての地位と海洋境界線を保持できるよう、法的手段を整備する。
  • 国際的な気候変動対策の推進:化石燃料の燃焼を抑制するよう各国に呼びかけ、気候変動に対する国際的な行動を促進する。
  • ツバルの文化と遺産の保存:デジタル技術を活用し、ツバルの文化的慣習や伝統的な知識、写真、歌などを保存し、将来世代に継承する。(デジタルツイン技術の利用)

これらの取り組みにより、ツバルは国家の未来を確保し、国民のアイデンティティと文化を守ろうと考えています。

※デジタルツインとは、現実世界の物理的な対象を仮想空間に再現し、データ連携を通じてリアルタイムでシミュレーションや分析を行う技術です。


デジタル国家への挑戦

国際的に認められれば、ツバルが世界初のデジタル国家となります。

このプロジェクトでは

  • 拡張現実と仮想現実を使って国家全体を再建
  • 政府機能の再現
  • 島の地形、伝統、ランドマークのデジタル化

を計画しています。

コフェ外相は、「物理的な領土とともに存在するデジタル国家を持つことが我々の希望だが、物理的な領土を失ったとしても、デジタル国家がしっかりと機能を果たすことだろう」と述べています。


プロジェクトの進捗

ツバルは完全なデジタルツインの構築に向けて前進中です。
このデジタル再現は、ツバルの文化や遺産を保存し、将来世代に伝えるための重要な一歩となっています。

デジタル化のために高解像度マッピング技術を活用しており、オーストラリアのパートナーと協力し、国家全体を正確にデジタル化する取り組みを進めています。これには、島々の物理的な地形だけでなく、伝統的な文化やランドマークも含まれています。これにより、ツバルの生活様式や価値観を後世に残す基盤が整いつつあります。

さらに、デジタルツイン技術は気候変動に対する分析や予測にも役立てられています。この技術を活用することで、島国が直面するリスクを可視化し、現実的な解決策を模索するための貴重なデータが得られるとされています。

プロジェクトの最新情報はこちらをご確認下さい。


国際的な反響と成果

「フューチャー・ナウ・プロジェクト」の発表は世界中で大きな反響を呼び、メディアの注目を集めました。

この革新的な取り組みは単なる話題作りにとどまらず、国連気候変動会議(COP27)では、ツバルの訴えが一因となり、気候変動の影響を受ける小さな国々を支援するための「損失と損害に対応するための基金」(Fund for responding to Loss and Damage、略称FRLD)の設立が合意されました。

さらに注目すべきは、2023年時点で26カ国がツバルのデジタル国家としての地位を正式に認めたことです。これは、従来の国家概念を超えた新たな国家形態が国際社会で認知され始めていることを示す重要な一歩と言えるでしょう。


課題と展望

ツバルの挑戦は、気候変動への適応策としてだけでなく、国家の概念そのものを再定義する可能性を秘めています。しかし、この野心的なプロジェクトの前途には、まだ多くの課題が横たわっています。

まず、デジタル国家を実現するためのインフラ整備が急務です。島国の限られた資源と技術力で、高度なデジタルインフラをどのように構築し維持していくかは大きな課題となっています。また、デジタル空間での国家運営には高度なサイバーセキュリティの確保が不可欠です。国家の機密情報や市民のデータを守るため、常に進化するサイバー脅威に対応できる体制を整える必要があります。さらに、国際法上の認知を拡大することも重要な課題です。いくつかの国からの認知は大きな一歩ですが、国連加盟国としての地位を維持し、国際社会で影響力を持ち続けるためには、より多くの国々からの支持を得る必要があります。

これらの課題に直面しながらも、ツバルは革新的なプロジェクトを通じて、気候変動の危機に直面する小国の声を世界に届け、国際社会の行動を促しています。

ツバルの挑戦は、私たちの「国家」に対する認識を根本から変える可能性を秘めており、今後の展開が注目されています。皆さんは、メタバース上の国家に住むことをどう思いますか?

では、次回もよろしくお願いします。

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