近年、海で目にする機会も多くなった“オールブラック”のサーフボード。中でもボード全体をカーボン素材で覆った高級モデルなども各メーカーから登場し注目を集めます。またトッププロがコンテストで愛用することもあって、気になっている方も多いのではないでしょうか。
その一方で「ブラックのボードはなかなか手を出しにくい」という話もよく耳にするところで、その理由としてはブラックが熱を吸収しやすいため「日差しにより表面に熱を持ち駐車場から入水の間にワックスが溶ける?」や、「修理・メンテナンスが大変?」など…。しかし、レーシングカーや宇宙開発などにも採用される軽量で強度の高いカーボンの性能はサーフィン界でも一定の高い評価を得ているのは確かです。
そんな中、フルカーボンのボードと時を同じくしてSNSなどメディアで目を引く特殊なボードがありました。それが後にFirewireからリリースされる『VOLCANIC(ボルケニック)』という新テクノロジーのボードなのですが、ケリー・スレーターやロブ・マチャド、スレーターデザインズのヤングガン、ジャクソン・ドリアンらが度々ライディング動画などを公開しており、当初はそのデザインから「ただお揃いのティントグレー(樹脂カラーペイント)のお洒落なボード」なのかと思っていたのですが、、、それは大違いで、全く新しい素材と最新テクノロジーを駆使した『もの凄いサーフボード』でした!
今回はそのFirewire『VOLCANIC』を徹底解析します。さらに『VOLCANIC』についてカリフォルニアに本拠地を構えるFirewire本社へのインタビューにも成功しましたので、フルカーボンボードに興味を持っている方もどうぞ最後までチェックしてみてください!
まずは、ある意味オールブラックよりも目を引く優れたデザイン性からご紹介。
〜VOLCANICテクノロジーとは〜
続いて素材と構造について深掘りします。『VOLCANIC』とは、日本では【玄武岩(げんぶがん)】として知られる火山岩を特殊加工した『バサルト繊維』という不燃性天然素材が原材料のファイバークロスを、従来のグラスファイバーの代わりに使用した最新構造です。
SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した素材としても世界が注目するこの『バサルト繊維』は、破砕・洗浄した玄武岩を1500℃以上の熱で溶解する必要があり、それをフィラメント(短繊維)しさらに幹繊維化する工程を経てサーフボード用のクロス繊維に編み込まれます。
〜VOLCANICの特性とサーフボードとの相性について〜
『バサルト繊維』の強度と重量については、冒頭でふれたカーボンと同様の特性があり、加えてこの繊維が天然の有機原料で作られていることから、バイオ樹脂と組み合わせることによって優れた分解性のECO代替素材としての機能を果たします。
更にはカーボン繊維やアラミド繊維と比較して使用温度範囲が−269℃〜+650℃と広く、耐酸化性、耐放射線性、圧縮強度が高いことや、耐衝撃性・剪断強度に優れているなど多くの特徴があります。高温に耐えることができるため、これまでカーボンが多く採用されてきた航空宇宙産業ではロケットやジェットエンジンの製造にも多用されています。
また、この繊維の弾性(フレックス性能)は、従来のカーボン繊維よりも高く、ボードがより柔軟になり足元で自然な感触を得ることができます。
RPV(Repreve)モデルでは、海に漂着したペットボトル(プラスチックボトル)から作られた世界をリードするリサイクルファイバーが採用されています。FirewireはRPVをVolcanicテクノロジーに融合し、優れた強度・フレックス性能の構築を行いました。さらに、このイノベーションは私たちにとって大切な海にペットボトルが漂い続けるのを防ぐことにも繋がります。
業界では全く新しい素材でありながらよりECOであり、アルカリや酸、塩分に対して強い抵抗力を持つというサーフボード製造に最も適した性質もあるわけです。
〜今、何故VOLCANICなのか?〜
ここまで『VOLCANIC』について紹介してきました。実は筆者はこの記事作成時点で既に(というか当然ながら)『VOLCANIC』のボードをオーダーしています。色々調べていて、その構造はもちろん、2つとして同じものが存在しない一品モノ(デザイン)であることにもすっかり惚れ込んでしまったのですが、ここである疑問が湧きます。
一体どのような経緯でこんなに素晴らしい素材・製造法を発見し、どのようにして今日の発表まで漕ぎ着けられたのか? 要するに、どうしてフルカーボンボードが注目を集める以前からカーボンの代替えとして一歩先を行く『バサルト繊維』に目を向けることができたのか? ということです。
これについては、今回有り難いことにFirewireアメリカ本社へのインタビューが実現しましたので、以下にその内容をまとめます。
Q :今回発売されたVOLCANICについて、SNSでまずデザインが素晴らしく気になっていました。のちに原料・構造を伺って本当に素晴らしいテクノロジーだとわかりました。どのような経緯でこのバサルト繊維(及び玄武岩)に目を向けることになったのでしょうか?
Firewire US(以下FW):サーフボード製造を行う我々Firewireにとって地球・環境へのダメージを最小限にするための革新的方法や材料の探究や発見はサーフィン業界においても最大の目標でもあり、それを常に進行形とすることを重要な理念としています。
我々は2005年にフルカーボンのサーフボードを開発していて、その開発と同時にカーボンよりもECOで毒性の低い素材や製造法の模索も開始していました。その関心は多くのシェイパーやサーフボードデザイナーにとっても長きに渡る課題でした。そしてFirewireのボードデザイナーであるダン・マンもその一人でした。
我々が最初にバサルト繊維を用いたのはLFTテクノロジーで使用していたウェブ・フューズド・カーボン(蜂の巣状のカーボン繊維)から変更し使用した時です。
そこで蒔かれた種がやがてバサルトがファーバーグラスの代替えとなる我々の考察へと辿り着き、製造側の視点としてもバサルトクロスはファイバーグラスとの完全互換であり、伝統的なボード製造材料に対してより環境に配慮した互換品である事が直ぐにわかりました。
先ほども言ったとおり、常に革新的方法や材料の発見は続いていくものですが、現時点では『VOLCANIC』サーフボードの発表に誇りを持っています。
Q. バサルト繊維をサーフボードのクロスに用いた事による環境配慮への効果はどのようなものがありますか?
FW:『VOLCANIC』サーフボードがライフサイクルに与える影響の解析はまだ完了していませんが、Sustainable SurfからはECOBOARDSとしての承認・認定を受けており、製造過程においてもそれは伝統的な材料で製造されるサーフボードと比較して炭素排出量をおよそ30%削減している事を意味してます。
Q. :同様にPRVに対する、開発経緯や環境への効果なども伺えますか?
FW:『PRV(Reprieve)』はオーシャンバウンドプラスチック(海岸線から50㎞以内の内陸部に遺棄されたプラスチック)ボトルから作られた世界をリードするリサイクルド・ファイバーとして、VOLCANICテクノロジーと融合し、優れた強度・フレックス性能の構築を行いました。さらに、このイノベーションは私たちにとって大切な海へのペットボトル流入を防ぐ事にもなっています。Reprieveを用いる事によって、我々は自身のサーフボードの性能を維持しながらEco Meritsを向上させています。
Q. :実は私も既にVOLCANICのCYMATICをオーダーしました! 今後VOLCANICに乗りたいと考えるサーファー(ユーザー)のメリットや、ユーザーへ向けたメッセージはありますか?
FW:まず、Volcanicボードは軽くて調子が良い! レスポンス感も比類なきモノであり、殆どのサーファーが力のない小波でもそのことに気付くでしょう。
ロブは、ホームポイントのカーディフ・バイ・ザ・シーで最初のVolcanic Seasideをテストし、瞬時にそれを感じたと話していて、スピードを生むのがとても簡単になり、Volcanic形状はマニューバーを通じてのスピード維持にとても優れています。
我々はVolcanicがFWサーフボードや提携ブランドに於いて益々重要になる事を期待している、何故ならロブ・マチャドやジャクソン・ドリアン、ケヴィン・シュルツ、その他全てのVolcanic技術に対するフィードバックと感想が、圧倒的にポジティブだからです。
インタビューの内容は以上です(ご協力いただきましたFirewire Japan戸塚さんに大感謝です)。
いかがでしたでしょうか? 筆者はもうボードの到着が待ちきれない状態ですが…
まず唯一無二のデザインが最高! 中身を知ってさらに感動! のFirewire次世代エコボード『VOLCANIC』徹底解析でした。
最後に余談ですが、冒頭で挙げたフルカーボンのサーフボードについて、インタビューにもあるとおりFirewireでは2005年に開発されており、現在トッププロサーファーが使用しているフルカーボンボードもその当時Firewireで開発に携わった面々や技術が深く関わっているそうです。なるほど納得ですね!
『VOLCANIC』についてさらに詳しくはFirewire Japan Websiteまたは全国の取扱いディーラーまで
FIREWIRE JAPAN WEBSITE:https://firewirejapan.com/
FIREWIRE JAPAN 公式Instagram:https://www.instagram.com/firewire_jp/