米山予報士のコラム5回目『2023年の台風』

米山予報士

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米山予報士/大学を8年で卒業。その間、勉強などせず、山と海で遊ぶか家に引きこもっていました。当然、就職などまともにできるはずがなく、社会人経験もゼロ。なのに30歳になってしまいました。ただ、山のおかげで天気図に興味をもち、サーフィンをやっていたから気象予報士になれたと思います。サーフィンと気象、波情報の業務を精一杯頑張りたいです。

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発生予想数は平年よりやや多いとされていたが、実際は大きく下回った

今年の台風の発生予想数は平年よりやや多いと言われていましたが、台風の発生数は16個でした。

平年は25.3個(1951ー2022)なので、大きく下回りました。

特に台風シーズンの9月は発生数が2個で、統計開始以来、1973年と1983年に並んで最少記録となりました。

9月の台風の発生数が少なかったのは、太平洋高気圧の勢力が強く、モンスーントラフが弱かったため、熱帯域での反時計回りの循環運動(台風の元になるまとまった雲を作る)が少なかったからだそうです。



うねりが届いた台風の数はそこそこあった

2022年は台風の発生数が26個、湘南にうねりが届いた台風の数は10個でした。

一方、2023年は台風の発生数が16個でしたが、湘南にうねりが届いた台風の数は11個でした。(私の調査による)

今年は台風の発生数は少ない年でしたが、うねりが届いた台風の数は発生数のわりに多かったと言えます。

2022年と2023年の台風が発生した位置

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2022年と2023年の台風が発生した位置を比べると、2022年と2023年ともに、北緯20度以南で発生した台風の数は13個でしたが、北緯20度以北で発生した台風の数は、2022年が13個、2023年が3個でした。

北緯20度以南の熱帯域では貿易風という東風が吹いているのですが、日本付近より南北の温度差が小さく、基本的には日本近海の偏西風帯より弱い風になるため、台風の移動速度が遅くなります。

このため、熱帯域で発生した台風は、高い海水温の海域をゆっくりと進み、十分に発達する時間があり、遠くからでも日本付近にうねりをもたらす場合があります。

2023年は、台風2号と台風15号の中心気圧が900hPaまで下がりました。

台風2号は5月に今年最初のうねりを届けてくれた台風です。

また、台風15号は10月に今年最後のうねりを届けてくれた台風になりましたが、このように北緯20度以南で発生し、発達した台風のおかげで、発生数が少なくても、台風で遊べる日はそこそこあったのかと思います。

一方、北緯20度以北で発生した台風は、比較的に移動速度が早く、発達具合も熱帯域で発生した台風よりも未熟な場合が多いです。

2022年は北緯20度以北で発生した台風によるうねりが届いた数は多かった(私の調査によると10個中7個)ものの、うねりが続く期間などを考慮すると、2023年よりも劣っていたかもしれません。

来年の台風の発生数や日本付近の気温、海水温も気になりますが、北緯20度以南で発生する台風の数にも注目していきたいです。

数か月先の予測はまだ精度が低いこともありますので、台風の発生数が少ない予想が出ても、がっかりする必要はなさそうですね。

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