
台風6号がすぐ沖を通過後の、由比ガ浜の遥か沖から割れる大波の様子
今回の台風6号のように、自分たちのホームポイントのすぐ沖を通過したときには、波数が多い中で、波のサイズが倍・倍に大きくなって、一気に危険極まり無い状況になってしまいます。
ヒザが胸サイズ位になるくらいならばかわいいものですが、頭サイズが10分後に6feet、その10分後に10feetoverとなったら、はるか沖で割れるパワフルかつ危険なクローズアウトのブレイクが、一気にサーファーに襲いかかってくるのです。また、台風の接近中には風速も一気に強まり、風向もガラッと変わることも想定内です。さらには10メートル先までしか見えないような豪雨に見舞われたら、生きて浜に戻れる保証はまったくありません。
今回(6月8日)の津波の予想される高さは、津波注意報が想定する高さギリギリの1メートルでした。風浪の波と津波との違いを簡単に説明すると、その波の水量のとんでもない差にあります。風浪には山と谷があり、山をやりこせば谷があります。津波にも山と谷はありますが、その山と山との間隔は数百キロもの距離になります。
波の回転運動を利用したドルフィンスルーができるサイズならば、中上級者であれば容易に沖に出られますが、津波の場合は1メートルの高さの水がず~っと沖まで変わらず(山の状態)、その水の塊が何千トン何万トンとなって陸に押し寄せてくるのです。
「風の谷のナウシカ」の見渡す限りのオームの大群の突進を考えて頂ければ分かりやすいかと思います。あの見渡す限りのオームが突進する様子が津波なのです!!! そのエネルギーたるや莫大であり、車のみならず、家やビルや橋を押し流してしまうほどです。どんな泳力が優れたサーファーであっても、ひとたび津波に飲み込まれたら最後、海中から水面に上がることは到底不可能なのです。だから、仮に津波注意報であっても発令されたら速やかに海から上がって高台に避難してください、となるのです。たとえ津波の高さが30cmであっても、そのエネルギーは相当であり、かなりの危険性があると考えてください。30cmに惑(まど)わされず、その背後から押し寄せてくるものすごい水量の危険なパワーをイメージして欲しいのです。
無謀とチャレンジとは天と地ほどの差がありますが、台風接近時や津波注意報発令時(警報を含む)、そして人の力ではどうにもならない落雷の可能性があるときには(雷注意報発令時に加えて危なそうな雷雲が近づいてきた時も)、命を守るための「勇気ある海辺からの撤退行動」を最優先に考える必要が我々サーファーには課せられています!!!
日ごろThe Dayに備えてハードなトレーニングをされているBig Waverの皆さまや、海外のBig Waveにチャレンジし続けている現役プロサーファーらが大波に挑む姿勢には、私は心からリスペクトしています。
また、ある国内のBig Waver Teamにおいては、大波にチャレンジするサーファー全員がPWC(Power Water Craft=マリンジェットなど)のレスキュートレーニングをきちんと受けた上でトレーニングを重ねて、PWCのドライバーとサーファーのチームをいくつも作ってリスクマネージメントをしたうえで交代で大波にチャレンジしています。マウイのジョーズやボルトガルのナザレのチームなどのスタイルは、とても懸命なチャレンジだと思います。
無謀にサーフィンする行為は、そうした真摯に大波に対峙してきたBigWaverの方々の足を引っ張るだけでなく、人命が失われれば世間から見当違いの激しい批判を浴びてしまうことにもつながります。
余談になりますが、ジョーズやナザレの大波は北極から届く周期が長くて波数の少ない大波であるため、セットの4~5本(その日によって本数は異なる)をやり過ごせば、次のセットが入ってくるまでにレスキューが出来る時間や乱れた呼吸を回復させられるラッキータイムがあります。しかし、台風接近時の日本の大波の場合には波の本数がとても多くなるので、Big Waverでもあるレジェンドサーファーの添田博道氏が有名な言葉を残しています。
「ワイメアの25feetよりも某リバーマウスの4feetの方がとても危険であり、実際にそこの岸近くで海から上がれずに溺れかかったことがあるよ…」と。
サーフィンを含めた趣味においては、必ず無事に家族が待つ自宅に帰ってこなければなりません。愛する家族やその地域のサーフコミュニティーのためにも、台風が接近している荒天時と、津波注意報発令時(警報はもちろん)での無謀なサーフィンは絶対に控えて頂ければと思います。
また、日本はサーファーを見守る公務員ライフガードが各ビーチに配置されていないので、もしも危険なパドルアウトをしそうなサーファーを発見したら、「今日は危険だからサーフィンは止めておこうよ。地元の俺らでもサーフィン自粛しているくらいだからね。」と優しく諭してあげてください。尊い命が掛っているので遠慮などせずに注意しましょう。どうぞよろしくお願いいたします。(了)


