パタゴニアの自家栽培のウェットスーツ。天然ラバーはどこから来るのか?【特集】

Photo:Tim Davis

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パタゴニアは今シーズンより、レインフォレスト・アライアンスによるFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)認証を受けた農園からの天然ラバーを原料とし、再生不可能な石油由来のネオプレンを使用しない世界初のウエットスーツを発売している。これにより、メンズ、ウィメンズ、キッズを含む米国モデルのフルスーツの全コレクション21製品がユーレックス天然ラバー製になった。

3回にわたってパタゴニアの新しいウェットスーツを紹介する本特集。2回目の今回はパタゴニアの天然ラバー製ウェットスーツの原料がどのように栽培されているのかを詳しく紹介。1回目をご覧になっていない方は こちら をご覧ください。

グアテマラの高地で栽培される「へベア」という木から採取される樹液が原料となっているパタゴニアのウェットスーツの天然ラバー。レインフォレスト・アライアンスによるFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)認証によって多くのへベア農園のように環境悪化の一旦を担うものではない事が保証され、さらに未来への資源確保に貢献しているということだが、実際にはどのようなことなのだろうか?

【レイフォレスト・アライアンスとは?】
生物多様性の保護と持続可能な人間生活を目指し、熱帯地方の環境に焦点を置く国際的な非営利団体。農園がFSC基準を厳守していることを確認するための現場監査を行うのが、レインフォレスト・アライアンスだ。

 

【FSC(森林管理協議会)認証とは?】

この認証は環境的責任と社会的貢献を果たす方法で栽培および採取されたことを意味する。農園は森林伐採に関わっておらず、森林の生態系を保つよう管理されている。

F16_Yulex / Photo Rights Expire December 31, 2017.

パタゴニアのウェットスーツの原料であるへベア。残念ながら世界中ではその農園のほとんどが熱帯雨林を伐採して焼き払ってできている。さらに、その地域の原生種の植物を除去するために計り知れない量の有毒な枯葉剤が使用されている。
パタゴニアが採用するFSC認証のへベアは、再利用された農地で育てられ、雨水を利用して約40年もの寿命の間、ていねいに栽培される。周辺の生態系の生物多様性を支え、二酸化炭素が大気中に放出されるのを抑え、持続可能な方法で栽培されている。
また、このへベア農園では地元地域に長期的な雇用機会を提供し、労働者は安定した収入を得ると同時に、熟練した技術も習得することができる。さらにFSC基準では適用可能なすべての法律を満たし、従業員やその家族の健康と安全を保証する。

 

【天然ラバーの採取方法】

1940年代からグアテマラで栽培されているヘベアの木は、樹齢7年目に最初の樹液採取が行われる。適切に育てれば、ラバー生産用の樹液はその後30年間採取することができる。ヘベアは密度の高いハードウッドであるため、樹液の採取量が減少した木々は切られて製材され、それぞれ家具や家庭用品に姿を変えて新たな生涯をスタートする。そして切り株には新しい苗木が接ぎ木される。

Photo:Tim Davis

ヘベアの樹皮の内側では、樹液が螺旋状に通っており、それが天然ラバーを作る原料となる。
採取過程は、「ピカドール」と呼ばれる樹液を採取する人々が夜明けの数時間前から徒歩で出かけるところからはじまる。ヘッドランプで照らしながら、ナイフで樹幹に浅井切り込みを入れる、木から木へと移動していく。乳白色の樹液は新たに削られた溝を伝って流れ落ち、その下のカップのなかに集められます。
樹液の採取は切り込みが深すぎると木を傷つけ、腐食しやすくさせてしまう恐れがあるため、熟練した確かな手さばきを要し、ナイフは精密な角度と最適な圧力で扱われなければならない。木々が成長するにつれて削られた箇所が上へ伸びつつ回復するように、ピカドールたちは地面から同じ高さの位置で採取をつづける。また病気の感染を防ぐために、樹幹に最近切られたばかりの箇所には青い防カビ剤が塗られている。

以上のように、パタゴニアの新しいウェットスーツの原料は作られる。
従来のネオプレンのように工場で大量のエネルギーを消費して製造されるのではなく、太陽の光と水と土からの養分を丈夫で弾力のある天然ラバーに変身させるのだ。

それでは、実際の製品はどのようなものか?
最終回は製品詳細とその機能性に迫る!

ユーレックス天然ラバー製ウェットスーツ
http://www.patagonia.jp/yulex-natural-rubber-wetsuits?waad=Z9aRNglU

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