唐澤予報士のウラナミ『台風アンサンブル予想』

唐澤予報士

唐澤予報士
唐澤予報士:1991年、沖縄でサーフィンを始める。(スノーボードも開始)  1993年、初めてフルマラソンを完走。1999年、気象予報士資格を取得し登録。現在に至り、一児(娘)の父です。

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台風30号・アンサンブル予想

現在、気象庁では、予報する目的に応じて幾つかのコンピューターによる数値予報モデルを運用しています。

数値予報モデルとは、連続量である大気の状態を離散的な格子点値(grid point value・GPV)で表現し、各種大気状態を表す物理量の計算式を組み込んだものを、計算機の能力に応じた計算を行って将来の状態を得る方法です。

天気・天候の予報に使用している主な数値予報モデルには、目先数時間〜半日程度先の大雨等の予想に1km格子の局地モデル(LFM)、最大3日程度先の大雨や暴風などの災害をもたらす現象の予報に5km格子のメソモデル(MSM)、台風予報や1週間先までの天気予報には約13km格子の全球モデル(GSM)が用いられています。

各数値予報モデルの結果には誤差が生じます。誤差が生じる原因の一つは、初期値に含まれる誤差が拡大するためです。数値予報を行うためには、すべての格子点で、初期時刻の気温、気圧、風速、湿度などの初期値を与える必要があります。初期値は格子点での値ではなく、アメダスや気象台など現実に存在する観測点で得られます。そのため、陸上の地表付近では情報は密であるものの、海上や大気上層の観測データはかなり疎なものとなります。初期時刻の格子点値が得られたとしても、必然的にわずかな誤差が含まれることになり、誤差をゼロにすることができません。わずかに異なる2つの初期値から予測した2つの予報結果は、初めのうちは互いによく似ていますが、その差は時間の経過とともに拡大します。これは、大気の運動にある特徴的な性質「初期値の小さな差が将来大きく増大する」というカオス(混沌)的な振る舞いを見せます。

また、数値予報では、計算機の性能の限界により、ある大きさの格子を用いた近似式で気温や風等の予測計算を行います。このように近似式を使っていることからも、予報結果に誤差が生じます。

このような誤差の拡大を事前に把握するため、「アンサンブル(集団)予報」という数値予報の手法を利用しています。この手法では、ある時刻に少しずつ異なる初期値を多数用意するなどして多数の予報を行い、平均やばらつきの程度といった統計的な情報を用いて気象現象の発生を確率的に捉えることが可能となります。

現在、日本の気象庁の台風進路予想は、このアンサンブル予想が用いられています。初期値をわずかに変えた51個の5日半先までの台風の進路予想などを計算し、強度の不確実性を確率的に評価するための個々の予測シミュレーションとなっています。下記は、2021年の台風16号のアンサンブル予想です。ややバラツキはあるものの、多くのメンバーが日本の南海上を北東進する予想となっています。
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しかし、上述にあるように、カオスな動きを見せて、各メンバーの予想が大きく変わることもあります。下記は、2026年10月14日の午後9時に計算された、日本のはるか南東海上で発生する台風30号のアンサンブル予想です。途中までは多くのメンバーが西北西進する予想になっていますが、沖縄の南海上・台湾・南シナ海に進むメンバーもあれば、日本に向けて北東進するメンバーもあります。
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この台風アンサンブルに基づいて発表されている台風進路予想図は下記となります。とりあえずは5日先の10月20日にかけてフィリピン東海上に向けて西北西進しますが、6日先以降はまだ未確定、ということになります。
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また、全球数値予報モデル(GSM)で予想されている台風30号の進路予想は下記となっています。
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さて、台風による波の予想を考える際には、上記の台風進路図などに基づいて考えていますが、アンサンブルメンバーを見るとわかるように、最西端に進む予想では南シナ海で、最東端に進む予想ではアリューシャン南海上となっています。日本海に進む予想をしているメンバーもあります。どのメンバーが当たるかは不明なので、色々なストーリーが考えられる、ということになります。このように、台風時の予想は結構大変です……。予想の最後に「なお、新たな台風の予報円は後半になるほど大きくなります。台風の進路予想が発表されていない21日(水)以降も含めて予想が変わる可能性があります。最新の予想・実況を確認するようにしてください。」のようなことを書いていますが、誤魔化しているわけではないのです。そこら辺を理解してくれると嬉しいです。なんせ、2013年以来の台風が30個以上の発生となっているので、今シーズンの予想業務は苦労しました。

引き続き最新の情報を確認しつつ、安全にお過ごしください。

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