
パタゴニアが掲げた新たなコンセプト「オーシャンズ」。
“海と生きる”というブランドの本質をもう一度問い直すこの動きは、サーフカルチャーと共に歩んできた人々にどんな刺激を与え、どんな未来を描かせるのか。
全2回のインタビュー企画、その締めくくりとなる第2回は、長年にわたり海の現場を見続け、文化をつないできた田中 宗豊さんに話を聞いた。
パタゴニア大阪・中之島/アウトレットにて、“オーシャンズ”という新しい旗の下で彼が何を感じ、これからどんな波を起こそうとしているのか──その視点を掘り下げていく。
Vol.2 田中 宗豊さん
自己紹介とパタゴニアとの出会いや、関係が始まったきっかけを教えてください
大阪出身ですが、現在は海陽町に移住し、3児の父として暮らしています。
子どもたちも自然の中で遊ぶことが大好きで、川遊びなどを通してたくさんの経験をしています。
20歳の頃からハワイに通うようになり、そこでの暮らしを通して自然観が磨かれていきました。
それまでの「競技としてのサーフィン」から、「暮らしとともにあるサーフィン」へと意識が変わり始めた時期で、悩みながら模索していた時期でもありました。
そんな時、シェーン・ドリアンがピアヒ(ジョーズ)の波に乗っている写真を雑誌で見て、衝撃を受けました。
当時パタゴニアのアンバサダーだった岡崎友子さんから、
「世界は次の扉が開いたよ」「次のステージに行ったよ、宗豊くん。マウイに来た方がいい」
と声をかけてもらったことが大きな転機となりました。
それまでの生活から一度離れ、ピュアに“世界のトップの舞台”を肌で感じたいと思い、ハワイへ向かいました。
その準備の段階で「命を守る装備はあるのか?」と問われた時、ちょうどパタゴニアさんがインパクトスーツのプロトタイプを開発しており、先輩を通じて紹介してもらったのがきっかけでした。
そして2013年3月、初めてのファーストアタックに臨むことができました。
「自分の命を預けるならパタゴニアに」——そう思えたことが、すべての始まりでした。
現在取り組んでいる活動や、ご自身の関わっているコミュニティについてもお聞かせください
現在は、シェイパー、農業、ゲストハウスの運営、海や山などでの自然体験プログラム、そして放置林問題に取り組むウッドプロジェクトなど、幅広い活動に携わっています。
自分の地域の木材を使ったものづくりを大切にしており、サーフボードにも徳島の「木頭杉(きとうすぎ)」を使用しています。
「海にいても山を感じる。山にいても海を感じる」——そんなコンセプトを込めたサーフボードづくりをしています。
かっこいいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、ただ自分の好きなことをやっているだけです。
ご縁や導きによって、今の自分の在り方があるのだと思います。
オーシャンコンセプトへの変更を受けて
新しいコンセプトに共感する部分や、どんな印象を持ちましたか?
サーフィンからオーシャンへと、発信の幅が広がっていく中で、自分はサーフィンの世界で長く過ごしてきた分、ある程度“自分なりの哲学”のようなものがあります。
ただ、「海」というより広い世界になると、自分はまだまだ素人。
だからこそ、いろいろな人から知らないことをたくさん学べるのではないかと思っています。
謙虚な気持ちで教えてもらえることに、今はとてもワクワクしています。
今後、アンバサダーとしてどのような活動をしていきたいと考えていますか?
私は、特に何かを変えるつもりはありません。
これまで自分がしてきたことを、これからもそのまま続けていくだけです。
山に入って農作業をし、海に入ってサーフィンをして、おいしいご飯を食べる。
サーフボードを作り、それに乗ってくれる人と幸せを共有する。
そんな日々を続けていければ、それでいいと思っています。
パタゴニアのいろいろな方々と関わることで、ご縁がつながり、今まで以上に面白くて素敵な人たちとの出会いが増えていく。
きっとその出会いが、自分を導いてくれると思います。
結局のところ、自分がやるべきことをやるだけです。
海洋環境への思い
普段の活動を通じて、海の環境問題や地域との関わりについて感じていることがあれば教えてください。
私の暮らしている徳島県海陽町は、どちらかというと控えめな土地柄・人柄のエリアだと思います。
あまり欲張らず、みんな穏やかで、家族のような関係性があります。
誰かがとび抜けて何かをするというよりも、必要なことを必要な分だけやる——そんなバランス感覚を大切にしている地域です。
開発などに関しても「必要のないものはやらない」という考えが一致していて、満場一致で「開発はしない」という空気感があります。
利益を得るために何かを犠牲にするという発想も、ほとんどありません。
自分たちの遊びのために何かをするのではなく、地域との歩み寄りを大切にしながらバランスを取っている。
とても健全でいいコミュニティの状態だと思います。
海の保全活動も、サーファーだけではなく地域全体で取り組んでいます。
とはいえ、それも特別に意識しているわけではなく、「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」なんです。
これから取り組みたいことや、伝えたいメッセージがあればお願いします。
まずは、みんなで海ではだしになって歩いてほしい。
それが気持ちいいと感じるかどうか——そこが入り口です。
大切なのは、地球全体をひとつの視点で見ること。
海でも、山でも、川でも。
水に触れる機会が今より少しでも増えたら、それはとても素敵なことだと思います。
「オーシャン」という言葉が持つ意味
最後に、あなたにとって「オーシャン」とはどんな存在ですか?
神秘の世界です。
まだまだ知らないことばかりで、だからこそ惹かれ続けています。

海は、誰にとっても開かれた場所であり、学びと気づきを与えてくれる存在です。
私たち一人ひとりが、海を通じて自然と向き合い、地域とつながり、次の世代へとその価値を受け継いでいく。
それこそが、パタゴニアが提唱する“オーシャン”の本質であり、これからの時代を生きる私たちの使命だと思います。
パタゴニア 大阪・中之島
https://www.patagonia.jp/patagonia-osaka-nakanoshima-outlet-japan/store_399347575.html
↓Photo Credit:©2025Patagonia,Inc.










