
近くて、どこか遠く感じる隣国、韓国。
時代ごとの政治環境によって距離が縮まったり離れたりを繰り返してきた国だ。
ソウルの空港近くにはWAVEプールができ、最近は注目を集めている。
ただ今回は、やはり自然の波を求めて、サーフィンができる東海岸へ向かうことにした。
目的地は、ソウルから東へ向かった先にある襄陽(ヤンヤン)エリアだ。
ソウルから東海岸へ
韓国に詳しい知人から情報を集めると、現地での移動は意外とシンプル。
空港からバスや電車で最寄りまで行けば、宿のオーナーがバスターミナルまで迎えに来てくれるという。
成田からソウルまでは多くの航空会社が就航しており、LCCキャンペーンを使えばかなり安く行ける。
本場の韓国料理も気になるし、地方の文化にも触れてみたい。
そんな軽い好奇心も、このトリップの動機だ。
空港に到着し、バス乗り場を探す。
近くの人に教えてもらい、自動券売機でチケットを購入。
「KTX(韓国の高速鉄道)でも来れますが、バスの方が時間はかかるけど簡単ですよ」
ソウルからカンヌンまでは高速バスで約3〜4時間。
途中休憩を挟みながらの移動だが、高速バスは快適だった。
終点のバスターミナルで宿のオーナーと合流。
「部屋は一泊5万ウォン。ボードはレンタルで問題ないですよ」
宿へ向かう途中、食堂に立ち寄り、軽くビールと焼肉で乾杯。
「水温は冷たいですか?」
10月はそれほど寒くなく、ジャージのフルスーツで十分だという。
韓国サーフィンの中心「ヤンヤン」
韓国の主なサーフエリアは、済州島、釜山、そして東海岸のヤンヤン。
中でもヤンヤンは、ここ数年で一気に注目を集めている「韓国サーフィンのメッカ」だ。
ヤンヤンはソウルからのアクセスも良く、人気の観光地。
夏はサーフィンや海水浴で賑わい、自然も豊かだ。
この10年でペンションやリゾートホテルが急増し、急速に開発が進んでいる。
海は日本海側に似た地形で、透明度の高いエメラルドブルーと美しい砂浜が広がっている。
イングビーチでのサーフィン
到着したのは夜遅く。
翌朝、ボードをレンタルし、宿の目の前のビーチをチェックする。
干満差が少なく、やや厚めの波質。
それでもサイズは十分で、水温もそれほど低くない。パワーも日本と同じくらいに感じる。
「このビーチは何ていうんですか?」
「イングビーチ。夏は海水浴場で賑わいますよ」
左の堤防にはテトラポッドが入り、そこからグーフィーがブレイク。
センターは左右に割れ、右側にはレギュラーの良い波が入る。
サーフタウンとしての顔
このエリアは、スクールやレンタルも充実しており、初心者にも優しい環境だ。
ビーチ周辺にはゲストハウスや民宿、カフェ併設の宿も多い。
夏の夕方以降はビーチクラブで音楽イベントが開かれ、ナイトスポットとしても賑わう。
キャンプ場もあり、週末は家族連れやグループで賑わう。
フォトスポットも多く、いわゆる“映える”場所も豊富だ。
近くにはスーパーやコンビニもあり、ビールの種類も豊富。
「夏はパーティータウンになるの?」
「7月と8月はかなり人が増えますね」
「サーファー的には?」
「ビジネス的にはいいけど…って感じですね」
シーズンとコンディション
ヤンヤンは太平洋からの台風スウェルの影響も受け、秋は特にコンディションが良い。
春(4〜5月):小波中心だがサーフィン可能。水温も上昇。
夏(6〜8月):シーズンピーク。小波だが混雑あり。
秋(9〜10月):ベストシーズン。台風うねりが入る。
冬(11〜3月):サイズは上がるが水温は低い。
「おすすめは?」
「9〜11月ですね。水温もまだ冷たくないし、いい波が入ります」
冬は5mm+ブーツ・グローブ・ヘッドキャップが必要になる。
歴史と海岸線
韓国と日本は、仏教や儒教を通じて長く文化交流を続けてきた。
一方で、朝鮮半島は南北に分断されている。
その影響もあり、東海岸の一部は長年、一般人の立ち入りが制限されていた。
軍の監視区域として管理されていたためだ。
山の上には監視塔があり、現在も警備が続いている。
38度線は決して遠くない。
解放されたサーフエリア
2000年代後半、政府主導で東海岸の観光開発が進められた。
有刺鉄線の撤去、軍管理区域の縮小とともに、サーフィン観光も推進。
竹島ビーチ、イングビーチなどが約40年ぶりに開放された。
現在はカフェやサーフショップ、ビールバーが立ち並び、若者文化の中心地に。
「サーフィンを楽しむ海の街」としてのイメージが定着しつつある。
ナイトライフとローカルの空気
コンビニで地元ビールを買い、宿のテラスで一杯。
その後、ローカル食堂へ。
ビビンバを注文し、混ぜて食べる。
「カムサハムニダ、マシッソヨ」
街は夜遅くまで賑やかで、サーファーや観光客がチキンとビールで盛り上がっている。
隣の客がフライドチキンを分けてくれる。
こういう距離感は、嫌いじゃない。
焼酎やマッコリを飲みながら、両手で注ぎ、両手で受ける。
そんな文化も自然と馴染んでいく。
別のポイントへ
滞在中、北へ車で1時間ほどの場所でアマチュア大会が開催されていた。
多くのサーファーと観客。
ジャッジタワーではライブ配信も行われている。
「この辺りにポイントはいくつあるの?」
「10カ所以上ありますよ」
無人の波を探して
宿の裏手の岬を越えると、別のポイントがある。
自転車を借りて移動し、岬の先端へ。
左右に街とブレイクが見える。
右側はロングライドできるレギュラー。
中央は左右に割れるピーク。
さらに奥へ行けば、ほぼ無人の波もある。
ローカルに配慮しながらアウトし、数本乗る。
良い波はしっかり走れる。
サーフィン後はそのままウェットで宿へ戻り、シャワーを浴びる。
この流れが一番いい。
帰路と次の目的地
帰りはカンヌン駅から高速鉄道でソウルへ。
最高速度300km/hを超えるスピードで一気に戻る。
途中には冬季オリンピックの会場もあり、冬はスノーボードも楽しめるエリアだ。
ソウルに戻り、地下鉄でインチョン空港へ。
空港近くのWAVEプールも気になる。
自然の波と人工波、両方を楽しむトリップも面白そうだ。
次は済州島か釜山か。
まだ行く理由は残っている。
追記
近年、ビーチでの過剰な行動やマナー問題が話題になることもある。
その影響で、一般観光客にとってはやや訪れにくいという声も出ている。






















