今年は各地で大雨をもたらしている梅雨ですが、この梅雨期、特に梅雨前線が南岸にある時は、予想が頻繁に変わり、予想が外れることが少なくありません。
ところで「スケール」という言葉はご存知ですか?
何となく”物の大きさ”をイメージさせるのではないでしょうか。気象の世界でも「スケール」という概念があり、水平方向や鉛直方向の規模が大きく、気象現象の継続時間が長いと「大きなスケール」、その逆は「小さいスケール」となります。
スケールの大きい現象はほぼ正確に予想できるものの、スケールが小さくなればなるほど最新のスーパーコンピューターを用いても予想が難しくなります。
気象学的に、梅雨前線上の低気圧やくびれは中規模現象に分類され、比較的スケールの小さな現象となります。また前線を境とする気温差は大きくなく、梅雨前線の位置を正確に予想するのは難しいものの1つでもあります。この梅雨前線上の低気圧やくびれの発生の有無、位置の微妙なズレにより、風・波・雨などが大きく予想と変わることがあります。
実際に、6月25日午後9時を対象とした予想天気図と実況天気図でみてみましょう。
6月25日午後9時の実況天気図を見ると、関東南岸の梅雨前線上で低気圧が発生し、翌26日の朝には相模湾で南寄りの波が強まりました。一方、予想天気図では24時間・48時間前ともに、前線が波打つ”くびれ”は見られますが、低気圧が発生することまでは予想しておらず、相模湾の波も控えめな予想でした。
このように、梅雨期、特に梅雨前線が南岸にある時は、予想が頻繁に変ったり、予想とは裏腹の実況となることも少なくありません。そんな予報の確からしさをご理解いただき、常に最新の実況や予想を確認するように心がけていただければと思います。
文責;気象予報士 唐澤敏哉