フレッチャー・シュイナード・デザインズ(FCD)が25周年を迎えFilm「フォーム・ダスト」が公開。
Patagoniaの創業者イヴォン・シュイナードの息子、フレッチャーが数人の友人とともに始めたFCDの25年の道のりをFilmとして収録。
filmの公開を記念して日本ツアーを開催し、ジェイソン・マキャフリー氏とショーン・カー氏が来日し、Film上映会とトークショーを行った。
ジェイソン・マキャフリー氏
FCDサーフボード創業当時のクルーであり、現在はパタゴニア・グローバル・サーフ・ビジネスユニット・ディレクター。
ショーン・カー氏
ベンチュラにあるFCDヘッドクォーターでショップ・マネージャーを務め、リテールとセールス部門を担当している。
波伝説ではジェイソン・マキャフリー氏に単独インタビューを行い25年の想いを語ってもらった。
FCD25周年おめでとうございます。今の率直なお気持ちを
このフィルムをきっかけに日本に戻れたことがとても光栄です。本当に楽しい時間を過ごしています。
「フォーム・ダスト―FCDの25年」を制作した経緯は?
Patagoniaが50周年を迎え、FCDが25周年となり、オリジナルのメンバーが現在も在籍している中で、今までの話をまとめてみたいと思いました。
50周年の節目でビックなアイディアがいっぱい話に出ていましたが、やはり私はFCDのクラフトマンシップの話をしたかったので制作に至りました。
25年の間で苦労した点はありますか?
このフィルムを最初作ろうと思った時に、7分ぐらいのフィルムにしようと思っていたのですが、色々集めた結果ラフで1時間20分にもなってしまいました。みんなの色々な裏話を隠さず話をしたいと思いましたが、悪いこともいいことも全て詰まっていて、全てをさらけ出すのがとても不安でした。
また、お客さんがこのフィルムに興味を持ってくれるのかどうかも不安でした。
サーフボードを作るのにはいろいろなチャプターがありました。
最初はサーフボードを作るのではなく、ブランク会社として始めたのですが、他のフォームにはないハイクオリティーで、頑丈であり、さらに環境に良いマテリアルで探しました。色々なマテリアルをテストしたのですが、納得のいくクオリティにたどり着くまでが、なかなか難しかったです。
フォームが良くなってきたら次はグラッシングを良くしたいと思い、次のステップに進みました。
フレッチャー・シュイナードのいいシェイプをグラスするショップがなかなかなく、自分たちで作れるようにするためにエキスパートを探すことが2つ目に苦労した点です。
25年のうちの最初の10年はうまくいくのかどうかとても不安でした。
その後はゆっくりと進めることができました。
FCDのセールスポイントを教えてください。
サーフボードは頑丈さと長く乗れることを大事にしています。
数多くの板を作るのではなく、「一番いい板を作ること」が目標です。
他のブランドとは考え方が違うので色々な意見もありましたが、今となってはたくさんのアンバサダーが応援してくれています。
パタゴニア社とのリレーションシップはどうですか?
兄弟でもあり家族でもあります。
Patagoniaは親で、FCDはティーンエージャーのような関係であって、喧嘩もしたりするけど、守ってくれる存在です。
最初はFCDは自分が想像したものを作りたかったのですが、PatagoniaはPatagoniaであって、ようやくFCDがちゃんと自分たちで責任を持てるようになり、ようやく本当の兄弟のようになりました。
Patagoniaの会社がボスではなく、イヴォン・シュイナード自身がボスであって、ルールとかしがらみがあっても関係なく、自分たちが作りたいもの、作りたいサーフボードがあれば何があってもそれをやりなさいと言ってくれていました。
あとは会社からの意見に対しては、うまくやりなさいと言われていました。
サーフボードに関して、現在取り組んでいるNewモデルはありますか?
メイコ・ツインというモデルをローンチしました。
今はステップデッキというデザインを試しています。
フレッチャーはいつも新しいことを考えています。
新しいマテリアル・フォーム・グラスなど常に考えています。
フォイルサーフィンなども研究しています。
10個考えていることがあったらそのうちの9個はだめで、1つぐらいしか出来上がらないぐらい、こだわりのものを作っています。
パタゴニアのミッションやバリューを反映した高品質なサーフボードを作ることとは?
パタゴニアをはじめたのはイヴォンだが、FCDをはじめたのはフレッチャーです。
Patagoniaの哲学として「アテンション・ディテール」という言葉があります。
しっかり細かいことまでしっかり見ること。
ピトンとかのクライミング道具の進化を進めた時と同じアプローチでした。
イヴォン・シュイナードのセオリーだと一番大切なものを作ることが大切なビジネスである。
クライミングやサーフボードは命がけで使うものであるので、ただただ商品ではなく「大切な道具」であるということです。
フレッチャーとの交友・ジェイソンからみたフレッチャーとは?
兄弟というか弟みたいなものです。
一緒に旅したり仕事だったり色々な経験を一緒にしてきました。
付き合いはかなり長く、28年ぐらい経ちますね。
最初は私が23歳でフレッチャーが18歳か19歳ぐらいでした。
最初に会った時は全然話したりしなかったけど、みんなサーフボードの工場に住んでいたので、仕事の後に駐車場でキャンプファイヤーしたりビール飲んだりしていたのでそこで話したりするようになりました。そこで関係性が始まりました。
パタゴニアのキャリアはアトランタのRetail Sales Associateから始まり1995年9月に入社と社歴は長いですが、パタゴニアで働き続ける情熱はどこから来ているのでしょうか?
私はニュージャージー出身でPatagoniaの仕事をする前はガソリンスタンドとピザ屋さんでしか働いたことがありませんでした。
当時からサーフィンがしたくて、大学卒業後にアトランタのPatagoniaのお店で働いていました。
友達がベンチュラのGPIW(Great Pacific Iron Works)で働いていて、そこの席が空いたと聞いたのですぐに行きました。
4~5か月後にイヴォン・シュイナードがサーフボード事業を始めると言ったのですぐに立候補しました。
両親を説得するのが大変でしたが・・・
もちろん車に住んでることは内緒にしていましたけどね。
映画にも出ていますが、仲間が家族だったので毎日サーフィンしたりとても幸せでした。
常に新しいものに挑戦したり習ったりして夢のような状態でした。
他の友達とかはスーツを着て仕事をしていましたが私はそういう生活ではないものを望みました。
これからの展望は?
最近オーストラリアでFCDサーフボードを作れるようになりました。
ベンチュラだけで作るのは輸送したりすると経費もかかるし、それによる環境への問題もありましたので、オーストラリアにもPatagoniaは会社があるからそこの場所で作れるようにしたかったのです。
オーストラリアのインハウスでFCDと同じクオリティを出すのが大変でした。
ベンチュラで制作したものとギャップをなくすことが大事です。そのために7年かかりました。
次はヨーロッパの工場を目指しています。
フォイルやカイトはポルトガルのApple Treeという会社とタッグを組んでやろうとしています。
オルタナティブなサーフクラフトを考えています。
Apple Tree社もライクマインデット(同じ目的を持って、同じ目標に向かって進む人たち)で、できるだけ使いやすく、パフォーマンスがあって環境などに対してもいい商品を作ることに取り組んでいる会社です。
彼らとそのプロジェクトを進めたいと思っています。
そうするとベンチュラFCDの会社が、カスタムやリサーチ&デベロップメントなどのこともできるようになっていけるかなと思います。
今はボードを作ることで手一杯になってしまっているので、これからさらに研究して進化していくことができるようになると思います。
それが一番良かったと思います。
いや。それが一番良かったです!
イボンとフレッチャーは、ただただ皆がやっていることを真似することがとても嫌なのです。
皆がいいと思っているところでも、もっとその先があると思っているのです。
フレッチャーも私も、もっと環境に良くてパフォーマンス性のあるものがあると思っています。
今のフォームもとてもいいけど、もっといいフォームがあるかもしれません。
だからこそ頑丈な板が必要なものだと思っています。
いくらいい板を作っても、それがすぐに壊れてしまっては消耗品でゴミになってしまいます。
一番長持ちする板がいい板だと思っています。
日本でのファクトリー建設の予定はありますか?
今はすぐにはできないけど、それができれば最高だと思っています。
日本のサーフィンのカルチャーの中でたくさんのいいシェイパー・グラッサーがいるのでポテンシャルがあると思っています。
FCDのボードはベンチュラで作っていましたが、Patagoniaサーフというビジネスが始まったのは渋谷のパタゴニアオーシャンストア(現在はサーフ東京に移転)でした。
日本への来日は何回目で何年ぶりですか?
2007年に初めて日本に来て、それから25回か30回ぐらい日本に来ました。最後に来たのは2019年にスノーボードで白馬に来ました。
Patagoniaサーフというのが日本で始まったのもあり、どこのリージョンより多く日本に来ています。
日本のウェットスーツのクオリティもとても良いので、Patagoniaのウェットスーツも日本製で始めました。
いつもインスピレーションを貰うところです。
日本は一番いいクオリティを望んでいるので、色々習いに来ています。
日本に来る際に楽しみにしていることはありますか?
いっぱいありますね。
友達・仲間に再会することも大切だし食べ物も好きです。
いい波を探し出すアドベンチャーもありますね。
毎回来るといつもチャレンジがあって、とても刺激を受けます。
日本の波で好きな場所はありますか?
一番いい思いをしたのは千葉でしたね。千葉でのサーフィン回数が一番多いかなと思います。
かたちの良い波がいくつもありました。
奄美もとても良かったです。
とてもスペシャルな波でした。
日本のビーチブレイクなどには、多くのポテンシャルがいっぱいあり、いい波を探し出すのがとても好きです。
ホームポイントはいつも波があるので新しいポイントで波を当てる面白さがありますね。
大きい波と小波はどちらが好きですか?
空いているところが好きです。笑
日本のサーファーへのメッセージをお願いします。
本当に感謝しています。
日本がなければ私も仕事を続けていられなかったと思います。
日本はとてもいいサーフカルチャーがあると思います。
なのでいいカルチャーはなにも変えないでいてほしいと思います。
日本のおもてなしにもとても感謝しています。
毎回帰るときに友達などへのお土産をたくさん買って帰ってます。
Tシャツやステッカーなども買うし、スーパーでお菓子などもたくさん買いますね。
パタゴニア サーフ東京では特別上映が実施され多くの来場者でにぎわった。
Patagoniaプロビジョンズのビールや食事なども提供され久しぶりに復活したイベントなのでまずは乾杯でイベントのスタートを行った。
上映後はジェイソン氏とショーン氏を交えたトークショーが開催された。
Patagoniaは50周年であり、FCDが25周年となる。この節目から今後のPatagoniaとFCDの未来が期待されていく。
パタゴニア50周年
https://www.patagonia.jp/50th-anniversary/
FCD filmページ
https://www.patagonia.jp/stories/foam-dust-25-years-of-fcd/video-130569.html
FCDのZINE
https://issuu.com/patagoniajp/docs/s23_fcd_zine_jp_hi
メイコツイン
https://www.fcdsurfboards.jp/mako-twin