波伝説ユーザーリポーターによるトリップコラム「〜1000km先の波を求めて〜」Vol.1

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これは、2020年に実施した波伝説のご愛顧キャンペーン企画『サーフトリップレポーター募集!~一生に一度、乗ってみたい波、サーフィンしたい場所~略してショーイチ』厳選なる審査を経て当選された斉藤有紀様によるサーフトリップの体験記です。




DAY.1

『一生に一度、乗ってみたい波、サーフィンしたい場所』はどこですか?

サーファーなら考えるだけでわくわくして、誰かと話し合うだけで丸1日潰せてしまいそうなお題。

この問いに、迷う事なく私の頭に浮かんだのがここ、小笠原諸島、父島。石浦海岸、通称メノウポイント。 以前何かの雑誌で見て以来、漠然と行ってみたい!と強く感じていた場所。(後にこれが2008年発行のNALUと判明)

今回チャンスを頂きついに訪れる事ができた。

台風1号とのすれ違い、行きの船旅は通常24時間のところ25時間となった。

船酔いするかも、という不安は実はほぼない、けれど願掛け的に酔い止め薬を飲み、大量に缶ビールを買いこみいざ乗船!生まれて初めてのおがさわら丸。小笠原には空港がないので交通手段はこの6日に1便の定期船のみだ。

以前新島にトリップに行った際来た事のある竹芝桟橋から、夢だった小笠原へ。乗船前に、まずは新型コロナウイルス陰性証明のグリーンのリストバンドを受け取る。船内および島内では基本的には常時着用してくださいとの事。なんとも今、2022年だなと思う。

リストバンドには“Protect Bonin island”と書かれている。小笠原は昔“無人島(ぶにんじま)”と呼ばれていて、そこに来たヨーロッパの方達が”ぶにん”を“ボニン”となまって呼んだことが由来だそうだ。日本に返還されて今年で54年になる。ますます期待が高まる。

11:00。いざ出航。遠のく東京湾、青空、雲を眺めながら屋上デッキにてまずビールで乾杯。いい波と色々な出逢いを祈って。こんな美味しいビールもまたない。

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24時間の船旅をどう過ごすか、実はあまりよく考えずに臨んでしまった。東京湾を出てすぐに私のスマホは通信不可に。。。スマホを失った私の残る武器は小説1冊と缶ビールのみ。後はおしゃべり。

「着いてすぐに1ラウンド入れるかな?」
「サイズどんぐらい残っているかな?」
「ジャーフルで大丈夫かな?」
「リーフはごりごりのリーフかな?海藻生えている系かな?」
「怪我したくないね。」

こんな事を話しているだけで時間はあっという間に過ぎていく。波への期待と妄想は止まらない。

ただ、声量には要注意!私はそもそも声が大きいとよく言われている。今回も、「うるさいですよ!」と軽く注意を受けてしまった、、、反省。波への期待と比例して声が大きくなりがちだけど皆さん!もしおがさわら丸に乗られる際は船内ではぜひ声量にお気をつけを!

パジャマに着替えてシャワーを浴びて荷物を整理して、なんてしている間に22時となり船内は消灯時間。そのまま入眠。期待と興奮でいっぱいの中、3秒で寝られる、私の特技だ。多分だけど夜中、船はだいぶ揺れていたと思う。私はその揺れに気づく事なく爆睡。むしろ揺れが心地よかった気さえしてくる。

翌日、目覚めてからは、買っておいた朝ごはんを食べて、屋上デッキで外の様子を伺って、これまた身支度を整えているうちにあっという間に小笠原諸島、父島に到着となった。本当に「あっという間」に着いてしまったという感覚。出発の翌日、お昼12時到着だ。

たまたま天気が良かったからか、気持ちの問題か、到着後すぐ感じたのが輝かしい、という印象だ。光輝いて見えた。いよいよ小笠原トリップの幕開け。



DAY.2

竹芝桟橋出発から25時間、二見港入港。ついに父島に上陸!二見港には本当に多くの人達が出迎えのためか集まっていた。お帰りなさい!いらっしゃい!待ってたよ!色んな声が飛び交いウェルカムムードが熱気と共に満ちていた。とにかくものすごく明るい感じがする。

下船後まずは預けていたサーフボードを受け取る。

私はサーフトリップに出て、船でも飛行機でも、到着後サーフボードを受け取る瞬間が好きだ。手元に戻ってきて準備万端感がする。

受け取り後まずは今回お世話になる宿、「PAT INN」の方達にご挨拶。そのまま宿へ。「PAT INN」とは、初めて小笠原諸島に移住した欧米人と言われる方が始めた宿なんだそうだ。そう聞くと年季の入ったふっるい宿かと思ってしまうがそんなことは全くなく、とてもきれいでおしゃれな「PAT INN」さん。

そこにこの旅もう一人の相棒、レンタカーminicabもやってきた!!さらにテンションが上がる。どこへでも行けそうな気がしてきた。

荷ほどきもそのままにさっそく1ラウンドするべく、今回お世話になる父島しまんちゅのチャッピーさん「C-trip」と共にサーフショップ「RAO」さんへ。オーナーの方が島中のポイントを開拓したという小笠原諸島唯一のサーフショップ「RAO」さん。

そこで、ローカルサーファーのマシューに「ブタジョン」というポイントに連れて行ってもらえることになった!ブタ海岸とジョンビーチの間だからブタジョンというらしい。湘南で言えば「チーパー」(チサンとパークの間)、千葉北なら「シダトラ」(志田と東浪見の間)「シダイトウ」(志田と太東の間)みたいなものだ。ポイント名って本当におもしろいなと思う。以前、通称だと思っていたポイント名が友達に全く通じなかったことがある(笑)

ということで車で「ブタジョン」へ向かう。ポイントまでちょっと歩くからスニーカーで来てね!と言われたのでビーチサンダルからスニーカーに履き替えいざ出発!!

着いたところは登山道の入り口だった。どうやら峠を越えるらしい。ちょっと歩くってそういう事か、と思ったのは最初だけで割と“ちょっと“ではなくがっつり峠越えだった(笑)

サーフボードを抱え、ジャーフルやお着がえポンチョなどが入ったリュックをしょって、台風通過後でぬかるむ道を上っていく。正直ちょっとしんどい、がマシューはサクサクのぼってゆく。さすが!そんなマシューと頂上で1枚記念撮影。ここから下る事15分?くらいでついにポイント到着。ちょっとしたスペースがありそこでパパっと着替えてからマシューにポイントレクチャーをお願いする。見えるリーフ、見えないリーフの場所、ブレイクポイントやカレントなど。けがをしたくないので何度も確認してしまう笑

初めて入るポイントはちょっと怖い気がするような気もするけどぶっちぎりで楽しみな気持ちの勝ち。

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いざ入水。ここから100m弱パドル。水はやや冷たく、透き通っている。たどりついたポイントはゆるやかな湾の中。とても静か。3人で貸し切りだ!波数は少なく、サイズは胸肩たまに頭近い。(ちなみに私は身長150cm)ちょうど真ん中に顔を出している岩が少々怖い、ピークの場所も最初はうまくつかめずなかなか乗れない!!

特にライトは岩ぎりぎりで割れるところからのテイクオフなのでなかなか思い切っていけず。。。岩ぎりぎりに見えるだけで実際はそうでもないのだと思うのだけど、視覚的になれていないとちょっと怖い。ただ、今思うともっとがんがん行っておけばよかった!と後悔だ。。。レフトは岩もなく恐怖はない。さらに言えば私はグーフィーなのでなお。なんとか数本満足のいく波をつかまえることができた。

到着が遅かったのであっという間に西日がまぶしい時間になった。波を透かして見る西日は柔らかい、西日を透かす波も優しい。もっと入っていたいという気持ちもあるが、暗くなってからの帰りの峠越えもつらいので早めに上がることにした。それでも山道入り口に戻ってきたときはもう辺りは暗くなっていた。へとへとの私たちは初日はこのまま宿に戻って休むことにした。まだまだ到着初日だ。明日へさらなる期待。



DAY.3

翌日は朝から小雨が降っていた。それでも小笠原にいる、という事実が私の中では全てを快晴に感じさせてくれる。

この日はチャッピーさんの案内で、近くの「宮の浜」、通称ドラゴンポイントへ。

公園施設の駐車場に車をとめ、そのままビーチへ行けるポイントだ。

こちらも静かなきれいな湾。左奥のリーフブレイクを目指してパドル開始。ここもまたびっくりするほど水が透き通っていて海底がよく見える。青や黄色の魚やサンゴが肉眼で見える1ラウンドだ。この宮の浜、サイズが上がったら一体どんな感じになるのか、ぜひまた来たい。

この日は他にできそうなポイントがないという事で、午後は島中を案内してもらえることになった!お昼ご飯のサンドウィッチをテイクアウトしいざ出発。まずは「ウェザーステーション展望台」へ。ここでは水平線が一望できる。見えるのは青と白だけ。

普段千葉では東の水平線しか見ることができないがここでは西側の水平線だ!夕日が沈むころが絶景との事。ぜひ夕方戻ってくることを決意。(実際はこの日の夕刻、レンタカーの鍵をなくすハプニングがあり、結果夕日に間に合わず願いかなわず。旅のハプニングは楽しいので何でもあり!ウェザーステーションでの夕日鑑賞は次回来た時にすることリストにのせておこう!)

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そしていくつか他のサーフポイントも案内してくれるという!!波がないという事だけど波はなくてもいい。見られるだけでいい。下記簡単に紹介。

  1. まず扇浦海岸。通称バクダンポイント。爆弾のような波がブレイクするのが由来だそうだ。この日は残念なことにフラットだったけれど、ぜひそんな、爆弾のようなブレイクを見てみたい。
  2. そこから向かって左側は、通称ウルマツポイント。バリ島のウルワツの様なブレイクの松林の前のポイント。リーフがシャープな感じで波があっても入るのをためらってしまいそうな感じだ。それにしてもやはりポイント名は面白い。ウルマツとは(笑)
  3. そのさらに西側には30’sというポイントがあった。ここもやはりエキスパートしか入れないような雰囲気を醸し出している。見に行った時、波はなかったのにもかかわらずなにやら背筋が伸びる感じがした。1人では入らないほうがよさそうだ。
  4. そこから回り込んだ南側にあるのが父島サーフィンのメインポイント、焼き場海岸、通称サンセットポイント。こじんまりとした静かな湾。きれいにうねりがはいっている。そしてブレイクもきれいなかたち。ぜひここでサーフィンをしてみたい、と思ったこれも次回来た時にすることリストだ!
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そしてここから島の反対側、東側へ。明日サーフ予定の石浦海岸の様子をうかがうべく初寝浦展望台へ。石浦海岸はみえないけれど、明日波がありそうなことを確認できた!

ポイントチェック以外に、戦跡も案内してもらう事ができた。正直、小笠原と戦争という言葉が私の中では結びつかなかった。そんな人が他にもいるかもしれない。ただ、硫黄島と聞けばなんとなくわかると思う。太平洋戦争の戦跡。砲台や見張り台の様な壕。中には波待ちしながら海から見えるものもいっぱいある。沈没船が見えるところもある。父島では今も新しい戦跡が見つかることがあるらしい。硫黄島は現在も元住民の方達の帰島はかなわず、民間人の立ち入りは限られているそうだ。

ただサーフィンをしに訪れるのではなく、その土地土地の歴史を学ぶことは大事だと思う。守ってきたものや壊されたものがある。リスペクトする気持ち無しに入っていってはいけない気がする。浮かれてばかりいてはいけないことに気づかされた。今も地球上で戦争は続く。結局は奪いあいだ。平和って何だろう。

波も奪い合わずにシェアするピースフルな気持ちでサーフィンできたらいいのにな、となかなか波をとれない私は思ってしまう。

そしてこの夜は地元のお店、茶里亭で夕食。父島中心地の大村地区には思った以上に飲食店があり、全てが徒歩圏内だ!

そこで小笠原のクラフトビールを発見しさっそく注文。小笠原に地ビールがあるとは知らなかった。なんでも2020年に誕生したばかりのようだ!フルーティーでとてもおいしい。そしてなんと「新亀の煮込み」なるものがメニューのトップに載っている!後に聞いたところ、アオウミガメ、なんだそうだ。小笠原では年間100頭ほど捕獲が許されていて、この時期が漁の最盛期、旬だとのこと。

亀を食べる、聞いてはいたけれど半信半疑だった事だ。まだまだ知らないことはいっぱいある。その後宿に戻って即就寝。晴れていれば満点の星空が見えるはずだったのだが、、曇っていたため星空観察はまた次回に持ち越し!
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Vol.2へ続く・・・

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