
世界の行ってみたい100のサーフポイント
『台北の近くの海岸は汚れていて、海からの風が吹き付ける季節はサーフィンには適さない』と随分前に人づてに聞いていた。
何かの縁か、台北の友人を訪れることになり、気になっていた台北エリアのサーフチェックとマッサージ、小籠包目当てに観光兼ねて訪ねてみようと思い立った。
冬の日本を抜け出し、勢いよく飛び立った飛行機は、四国~九州沖から、沖縄の東シナ海側を抜けて、与那国島、石垣島とほぼ同じ緯度の台北に到着する。久しぶりに訪れる台湾。
波乗りのディスティネーション高雄方面でなく、台北が目的地。最近、その友人から波があるとの情報があり、少しの期待はあるが、イメージできない。
飛行機で3~4時間、近くの海外。日本は寒い冬だが、そこには波があるらしい。
空港から高速電車に乗り、台北駅へ向かう。台北市内までは、空港アクセス特急のようなMRTで30分ほど。なかなか快適である。
ホテルにチェックイン後、晩御飯を食べようと近くの夜市へ行くと、いろいろな屋台から八角の匂いが漂ってくる。
夕暮れから夜遅くまで、観光客と地元の人がテーブルに溢れかえって、アジアの混沌を醸し出している。
晩御飯のメニューが多すぎて決まらない。
「豚レバースープ」「牡蠣のオムレツ」「鶏肉飯」「牛肉麺」デザートに「タロイモボール」「サトウキビジュース」「マンゴーアイス」に「タピオカ」。満足!
長い夏と短い冬が有る一年中温暖な島国台湾は、
中央部から亜熱帯気候と熱帯気候とに分かれている北東からの波に反応しやすいので、東シナ海側の北部より、太平洋側の南部の方がサイズがあるように思える。
次の日の朝、知り合いの車で宜蘭県に向かう。台北からは高速道路で1時間ほどかかる。
20~30kmほどある海岸線の北はずれ、港の北側から海に向かう内側の道沿いに入ると、何軒かのサーフショップ、民宿が見えてくる。
『ジェイさん、ですか?』
『はい。そうです。』
『波どうですか?』
『今日は風もなく、胸から頭くらいありますよ』
低い堤防を越えて、防風林を抜けると、広びろとした砂浜が見えてきた。
遠く右側に港の堤防があるので、波がまとまる場所なのだろう。
沖には亀のような島がポツンと浮かび、10~20人ほどのサーファーがいる。
しかし、全くのんびりとしていて、忙しくパドルしている人は見かけない。
『ウエットは持ってきたので、サーフボード借りれますか?』
『ショートからロングまでありますよ』
さすがに1月なので、スプリングスーツで入ると少しひんやりするが、
ボードショーツにタッパからフルスーツまで地元の着用アイテムは幅広い。
水も綺麗なので、サーフィンも楽しい。
『お店始めて長いのですか?』
『12年くらいやってます』
『海の混み具合はいつもこんな感じ?』
『今日は土曜だから多いけど、平日は半分くらいかな。でも夏は海水浴でいっぱいだよ』
太平洋に面している東側は切り立った山脈が海岸線に迫り、アクセスが大変だが、波も豊富、南の花蓮方面も含めてビーチ・玉石・リーフ・河口といろいろなタイプの場所があるらしい。
以前訪れた高雄空港からアクセスできる墾丁(ケンティン)と佳楽水(チャーロースイ)は、
南部のメインスポットであり、ここよりもサーファーが多く、日本人の旅行者も多い。
佳楽水は空港から車で約2.5時間。南台湾でも冬場がもっともコンスタント、モンスーンによる北東の風で波がもたらされるため、基本的に風が強い日が多い。
佳楽水の左側の玉石のレフト、右側の河口のエリアはいつも綺麗なブレイクだったのを覚えている。
墾丁エリアの南湾はビーチブレイクだが、地形が良いのかここも素晴らしい波だった。
日本語を話せるガイドもいて、ポイントまで連れて行ってくれるが、
波が来たら並走してボードをプッシュするような事もないので、人が多い割に海の雰囲気は良い。
ある日、台湾の東海岸、台東にも行ってみようと、
車にサーフボードを積み込み、宿泊先の墾丁を早朝に出発し、1泊2日の短いトリップ。
台東の小さな町には、道路沿いに民宿のような宿があり、4人一部屋になっていた。
到着後、海岸へ降りていき、玉石の多い場所へ出ると、何か所かで波が崩れている。
サイズもあり、風も弱く、コンディションはなかなか良い。
『ニーハオ』
と海の中で挨拶しながら、片言で会話を楽しむ。
夕方宿に戻ると、地元の人たちが集まり、宴会の雰囲気である。
ギターを弾きながら、酒を煽り、皆さん驚くほど歌がうまい。
その時に波乗りしたのが、東河河口(ドンハー)と金樽(ジンズン)という場所だったらしい。
台北はサーフィンだけでなく何か所かのヘリテージ(遺産)訪問も目的のひとつになる。
サーフィンの後で、まずは、天空之城・十三層遺跡へ。
台湾の「天空の城」日本の統治時代から続く鉱山、製錬所の跡らしく、宮崎駿監督のアニメ作品「天空の城ラピュタ」のモデルとなったと言われている。
そして夜のメインイベント、九份(きゅうふん)。ここは、「千と千尋の神隠し」モデルとされている。
金脈が掘り当てられ、数世帯しかなかった貧困な村が、瞬く間に三、四千世帯の巨大都市へと変貌。
「アジアの金の都」といわれ、「小上海」、「小香港」の異名さえ取っていた時期もあったらしい。
古びた町並み、建物、廃坑と燦燦と輝いていたゴールドラッシュの時代が再現されているが、混雑がひどく、正月とお盆の江ノ島参道を合わせたようになるのには閉口した。
次の日の朝、北部の金山方面へのサーフチェックへ向かう。
途中、故宮博物館へ寄り、収蔵品約68万点あるとされる、中華4000年の奥深い歴史を学ぶ。
第二次世界大戦後、紫禁城から運び出された所蔵品は国共内戦が激化するにつれて、台湾に運び出された。
その中華の至宝は、その収蔵品の価値の高さもあり、ルーブルと並び称される博物館らしい。
半日で全てを見ることは、残念ながらできない。
台北近くの西側から海沿いに北へ向かう。浅水湾のビーチサイドでコーヒーを飲み、15分ほどで白沙湾に着く。
名前通り、白い砂の湾で少し横から風が入っているが、波がある。しかしサーファーがいない。
もう少し先へ足を伸ばしてみたが、風が正面から吹きつけてきた。この先に温泉があるらしく、そこで休憩。
金山温泉に着くと、小さな漁港隣の湾で小さいが綺麗な波が割れている。
2~3名のロングボーダーが楽しんでいる、落ち着いた良い場所だ。
逆側の河口では、スタンドアップパドルでサーフィンしている。風が合えば、岩場からレフトの良い波が崩れそうだ。
海に面した街にある温泉で、その中に日本統治時代に作られた「金山総督温泉」がある。
庭には大きな冷泉と4階屋上にも海が見える風情ある露天風呂で海を見ながらのんびり疲れを癒す。
帰途、陽明山から見る台北市内は夕陽に照らされていた。
夜は市内に戻り、台湾料理。『小籠包』台北で絶対外せない一番人気のグルメ。
熱々の肉汁が溢れ出す小籠包、 鼎泰豊が最も有名だが、いつも空席待ちだと気がひける。
ガイドブックに載っていない店に行くには、地元の友人かタクシーのドライバーに聞く。
地下鉄も安いが、タクシーも便利だ。
観光地、総統府や中正記念堂、東門市場、お気に入りのお店、どこにでも連れて行ってくれる。
日本から近い台湾は、サーフィンと食と観光のハーモニー!
台湾のサーフシーンは派手さこそないが、確実に根を張っている。
北の宜蘭から、東河・金樽、南の墾丁まで、ポイントのバリエーションは豊富。
しかも、空港から数時間でアクセスできる。
朝は胸〜頭の波でサーフィン。
昼は遺産や博物館で歴史を学び、
夜は夜市と小籠包で満腹になる。
これほどバランスの取れたサーフトリップは、実はなかなかない。
日本の冬、厚いグローブとブーツに包まれながら海へ向かう朝。
ふと、「3〜4時間で行ける暖かい波」を思い出してほしい。
台湾は、確実に“もう一つの選択肢”になる。
世界の行ってみたい100のサーフポイント。
そのリストに、台湾の名を静かに加えておきたい。
そして次回は――韓国編。
日本海を渡った先にある、意外なサーフカルチャー。
冬のパワフルなスウェル、整ったビーチブレイク、そして独特のローカル色。
「寒い=波がいい」の方程式は、あの国でも成立するのか。
東アジアのもう一つの波を、確かめに行く。
次回もお楽しみに。












