5/5 Story of The Surf Pilgrim vol-28

Naoya Kimoto

Naoya Kimoto
サーフィンフォトグラフ界の巨匠、重厚なショットが魅力のKINこと木本直哉。 16才でサーフィンを覚え、20才からサーフィンフォトグラフィーの道を歩みだす。1981年から冬のハワイノースショアに通いだし、現在も最前線で活躍中。

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Kenta Hayashi @ Aki River  Kochi

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95566228_684921155591068_6862394498102591488_nKenta Hayashi @ Ioki River  Kochi

 

 

 

波巡礼街道もいよいよ四国・高知行脚に入った。

日本が世界に誇るリバーマウスブレイクが、土佐の海岸線に点在し、

梅雨明けには宝石のようなバンクが、いたる河口に敷き詰められる。

短くも儚い、それでいて華麗で熱狂的な河口の波は、サーファーを奮い立たせてくれる。

高知には代表的な、仁淀川、物部川といったワールドクラスのリバーマウスがあるが、

その陽に反し、ハイドしたリバーマウスも存在する。

東高知に位置する安芸市にある、安芸川と伊尾木川は、夫婦川、兄弟川とも呼ばれ、

お互いの河口が500mの距離にあり、川の源は別だが、

土佐湾に注ぎ込む河口では寄り添うような形になっている。

安芸のサーフィンのルーツは、

ケンタの父・ハヤシケンイチさん(1961年生まれ・59歳)によれば、

ケンイチさんがまだ中学生だった頃、つまり今から45年前だから1975年の事。

当時安芸川の河口が見える所に安芸中学があり、

ケンイチさんは教室の窓から、河口でサーフィンをしている人を見つけたらしい。

それが安芸のパイオニアサーファー・イチカワさんとマーボーさんだったと言う。

特にイチカワさんはコンテストにも出たりしていたこともあり、

千葉・鴨川のレジェンド・カワイミキオ氏との繋がりがあり、

ミッキーさんからサーフボードを調達していたらしい。

ケンイチさんはこの二人の影響を受け、14歳からサーフィンを始め、

色んな所へ連れていってもらい、後にケンタ生みの親となる。

ケンイチさんの同世代のサーファーとして、

安芸のオンちゃんや室戸のイッパツさんが、高知東部サーフィンの中枢にいたと言う。

 

そんな四国高知の片隅から、日本屈指のチューブライダー・ハヤシケンタが生み出された。

ケンタは1984年に高知市で生まれ、父の地元安芸市を経て、隣の芸西村で18歳まで過ごした。

両親共にサーファーであったため、4〜5歳の頃から海や川で遊び、

自然とサーフィンをするようになり、その頃は奈半利か尾崎でやることが多かったと言う。

そしてケンタが小学5年・11歳になった時、

年中サーフィンができるようにフルスーツを初めて買ってもらい、

その時に自分はプロサーファーになるんだと決めたらしい。

それからはチャリンコで物部、赤尾、安芸、伊尾木、安田、奈半利に通い、

波さえあれば丸一日サーフィンし、

河口がダメなら、尾崎や生見にも両親に連れていってもらったりしながら、

実力をどんどんと伸ばしていった。

その頃からコーストラインのヨシダ氏のお世話になり、試合などでも頭角を現していった。

中学を卒業すると高校には行かず、

父の営む農業(ナスビ)の手伝いをしながらのサーフィンライフとなり、

18歳になるとすぐに免許を取り、遠かったが生見に通うことが多くなった。

そんな時両親の離婚を機に、母、弟二人の4人で、

芸西を出て甲浦の白浜に引っ越し、生見がすぐ側になった。

生見にはナカノマサトやツジユウジロウ等もいて、

お互いが刺激しあい、切磋琢磨凌ぎを削っていた時代だった。

そして、2002年にプロ公認を得て、

5年後の2007年には日本の頂点、西日本初のグランドチャンピオンに輝いた。

2006年には白浜から海部に引っ越し、その後も日本のトップサーファーとして君臨し、

5年後の20012年に、再びグランドチャンピオンに返り咲いた。

押しも押されぬトップコンペティターのイメージが強いケンタだが、

その本性は、河の申し子、リバーマウスフリーク、チューブマスターなのだ。

特に生まれ育った高知の河口には強い思い入れがあり、その嗅覚は驚くべきものがある。

確か2005年の夏だったか、まだ20歳だったケンタとユウジロウを連れて高知入りした。

ケンタ情報によると、安芸川が半端ない地形をしているとのことだったので、

予定を変更して、安芸を狙うことにした。

生まれ育った安芸なので、ケンタは先輩のヨコチン事ヨコイトシユキ君を紹介してくれ、

その夜、俺たち3人は安芸川上流にあるヨコチンの実家に泊まらせてもらった。

川のせせらぎが、虫の鳴き声が優しく聞こえ、布団に入り夏の夜を味わっていたら、

隣で寝ていたユウジロウが、ニヤニヤした顔で、

チューブや〜チューブや〜と寝言を言いだしよった〜

翌朝一番に河口へ行くと、スーパーグラッシー、

3〜4のAフレーム、ライト&レフト共にドドドチューブ!!

堤防のすぐ沖に砂が溜まり、

目の前でパーフェクトなシリンダーからスピッツが吹きまくっていた〜

まさにユウジロウの寝言が正夢となったドリームモーニング。

二人は有無も言わずゴーアウト!俺もフィッシュアイでスイムアウト〜

バンクがコンパクトで、クローズセットもなく、これ以上ないと言うくらいイージースイム。

ワンロール撮っては岸に上がり、またフィルムを入れ替えスイムアウト。

これにも時間のロスがなく、確か3〜4ロール撮影することができた。

お決まりのオンショアが来だすと、波・チューブは乱れだし、朝のエピックタイムが終了した。

サーファーも一人また一人と上がっていき、さっきまでのお祭り騒ぎはなんだったんだろう?

と思うくらい。海にも駐車場にも人が居なくなった。

俺的には水中での手応えが充分あり超ストークだったが

ボーイズはまだ満腹ではなさそうなので、

その後も風の入ったリバーマウスでセッションを続け、

結局夕方までずっと海にいることとなった。

なのでもう一泊ヨコチンハウスに泊まらせてもらい、

またユウジロウの寝言を楽しみにしていたが、その夜ユウジロウの寝言は無く、

翌朝河口に行ったら、ゲッツビガーでやや大味になってしまっていた。

やはり昨日のあのタックシャープなチューブセッションこそ、

ユウジロウが夢に見た、ドリームセッションだったのかな?

この時に撮ったケンタのフィッシーインナーバレルショットがトップの写真。

また別のインナーバレルショットは、当時のサーフファーストの表紙も飾った。

その後何度も安芸川を撮影してきたが、

この時ほど水がクリアなセッションはお目にかかったことがない。

この時の取材で、安芸は俺にとっても特別な場所として心の片隅に残ることとなった。

 

2010年には、安芸の外れの大山港に、ヨコチンのお爺さん所有の使っていない家があり、

そこに一夏近く住まわせてもらったこともあった。

その年は仁淀、物部の地形が決まらず、安芸もだめだったが、伊尾木の地形が安定していて、

台風がなくても、地形でずっと波がブレイクし続けていた。

サイズが上がると、ケンタは足繁く海部から通い、父親の家に泊まったりしながら、

伊尾木のライト&レフトを、まるで遊園地の様にに楽しんでいた。

安芸は川が抜けにくいのに対して、伊尾木は抜けやすく、バンクもできやすかった。

安芸はドン深の海からいきなりバンクにヒットするので、掘れ度が激しく、難しいのに対し、

伊尾木の方が乗り易く、メイク率も高いと、ケンタは言う。

両方の川の河口が近いので、お互いの川の流れが入ったり、バンクが一直線につくと、

両者のブレイクでサイズがあるとクローズアウトしやすくなる欠点もあるが、

良い時は安芸のライト&レフト、伊尾木のライト&レフトの4箇所にポイントが分かれる。

特に伊尾木が最後の地形・バンクになった時に見せる

ショアブレイク・ダンパー・チューブは凄まじく、

ケンタのフェイバリットスポットの一つでもある。

 

2017年夏、高知で大量の雨が降り、川は濁流となり、

高知道は崖崩れのため通行止めとなってしまった。

そこに丁度台風が発生し、川の流れ次第では明日・明後日には良くなるだろうと思われた。

早速ケンタに連絡すると、大阪から来るなら高知道は使えないので、

海部経由で行くしかありません、との事。

ややその道(国道55号線)も崖崩れとかあるんじゃないかと心配したが、

今の所通行止ではないので、高知には行くことができそうなので、

かなりの遠回りになるが、早めに高知入りをした。

道中ありとあらゆる川は真っ茶色に濁り、狂ったように流れまくっていた。

目的の伊尾木に到着すると、うねりはまだ腰程度だったが、

流れがあるのも関わらず、すでにバンクが形成され、

ミニサイズながらもライトのパーフェクションが出来上がっていた。

ケンタはまだ海部で、明日から高知入りするとの事。

伊豆の試合に出場していたケイトは、

これから一度湘南に戻り、支度してから車で走って高知に向かうとの事。

同じく伊豆にいたマーは、明日の朝一の飛行機で高知入りするとの連絡が入った。

いよいよ明日からセッション開始なので、

その日は早めにマコト和尚の東本願寺土佐別院にチェックイン。

途中物部を見るも、河口が西向き、本来のバンクではなかった。

仁淀はもうすでに頭くらいあったが、

山から流されてきた大木・流木だらけで危ない状態だった。

翌朝暗いうちにそのまま伊尾木へ向かった。

ケンタはすでに到着し、ケイトも徹夜のドライブで遅れて到着したが、

波はまだ腰〜腹、、、

ケイトは運転疲れから寝てしまい、ケンタは小さい伊尾木でゲットウエット。

しばらくしてケイトが起き、

誰かからの情報で、仁淀の方があるみたいですよ〜と言うので、

ダッシュで仁淀に戻ってみると、、、、

4〜5ftのロングライトがニョキニョキピールしていた。

川の流れ(茶色)と波のブレイク(青色)が綺麗に分かれていて、

風もなく、ゴーインオフしていた。

ただ相変わらず流木や川から流れ出たゴミの塊が、

丁度ブレイクしているところを漂っている。

ケイトはロングドライブの疲れも何のその、

一目散に海へ飛び込み、風が入るまでの数時間、

レアなバンクにアップカミングスエルをスーパージョイしていった。

飛行機で高知入りしてきたマーは、

やや遅れたのでラインアップに着くやオンショアが来てしまい、

伊尾木から駆けつけたケンタも、入水するや風が入り出してしまった。

なので明日は仁淀かな?伊尾木かな?と悩むところとなったが、

ケンタはブレずに伊尾木狙いに絞り、俺らは仁淀を見てから決めようとなった。

翌朝まだ暗い3時半頃にケンタから連絡が入り、伊尾木が絶対にいいです、との事。

仁淀を見てからだと遠回りになり、到着も遅れるので、

とにかくケンタを信じて、真っ直ぐ伊尾木目指した。

道中薄明るくなってきた頃、再びケンタから、

ヤバいです〜ハンパないです〜との確信に満ちた電話が入った〜

もう近くまで来ていたので、よっしゃ〜と気合いを入れ直し、現場に到着すると、

一連の雨、そして波で打ち上がった流木やゴミの向こうに、

鮮やかな、これ以上ないくらいパーフェクトなライトが突っ走っていた〜

ケンタとタカヒデがジャストゴーアウトしたようで、彼らの一本目をみると、

まずケンタがテイクオフ、そのままズッポリチューブからスタンディングでカミンアウト〜

ワオ〜〜100点満点〜〜パーフェクトライド〜

ケイトもマーも、もうアンプ、アンピング〜

次に乗ったタカヒデも同じようにスタンディングチューブ〜〜

これまでに数多くの伊尾木のグッドデイを見てきたが、

今日は特別中の特別、ベストオブザベストと断言できる波質だった。

久々撮り逃しのないように緊張した撮影モードとなった。

ケイト&マーもラインアップし、

ケンタ&タカヒデ等とスーパーセッションが展開されていった。

すると朝一はライトだけだったのが、潮の関係かレフトも良くなり始めた。

もちろんライトも良く、サーファーの狙う波が分かれ出し、

やや撮影する側としては大変になってきた。

しかしケイトがいよいよ本腰入れてレフトを狙いだすと、

なんとスモールチョポカインドの波に変化してきた。

ライトはがっつり撮ったし、

何よりもライトよりもっとティックでハードコアなレフトに導かれていった。

こういったスラブになればなるほど、その実力を遺憾なく発揮してくるのがケイトブラ!

真っ逆さまのグラブレールテイクオフから、そのまま狂気のねじ込みプルインへ〜

もうケイトの猛アタックが止まらなくなってきた〜

そんな中でのスペシャルな一撃が下のシークエンス。

ありえない位置でテイクオフを試みるケイト、

肉厚リップの前に出て飛び込むようなドロップ、

何が何でもプルインしようとする熱血、それでも波は容赦無く掘れ上がってくる。

体のバランスを失っても、ワイプアウト直前になっても、まだメイク出来るぞという

ケイトの執念が浮き彫りにされたシークエンス(下)だと思う。

結果ワイプアウトだったが、まさにこの波がウエイブオブザデイ、

この日のクライマックスとなった。

長年、いや伊尾木と共に育ってきたケンタにして、ここまでパーフェクトなライト、

ここまで凄まじいレフトに巡り合ったのは初めてだと言わしめたザデイ。

今度こんな日にいつ巡り会うことができるのだろうか、、、

雨よ、風よ、砂利よ、波よ、太陽よ、神様、お願いします!!

 

 

 

 

 

95581351_629056311284562_7105056954870923264_nKeito Matsuoka @ Ioki River  Kochi

 

 

 

 

 

 

img221 img223Kenta Hayashi @ Aki River  Kochi

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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